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10月で10周年の401kが実はすごい!

10月1日で日本版401kこと確定拠出年金が10周年を迎えます。各紙でコメント、執筆等していますが、本当に言いたいことすべてAllAboutで語ります。実は401kのインパクトは記事に書かれていないところにある!

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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10月1日、日本版401kは10周年!

2001年10月1日、日本版401kこと確定拠出年金制度がスタートしました。いわゆる金融ビッグバンの申し子の一つとして、また日本の企業年金制度の新しい選択肢として、日本版401kがアメリカの401(k)プランをアレンジして誕生してから、早くも10年になります
(私がAllAboutで401kガイドを始めたのがこの年の11月だったと記憶していますので、まもなくAllAboutガイド10周年でもあります。今までご愛読ありがとうございます!)

ここしばらく、日本版401kの10周年に関する記事が紙面を賑わせています。日経ヴェリタス、日本経済新聞、等の新聞はもちろん、証券アナリストジャーナルのような専門誌も確定拠出年金の特集を組んでいます。
私はたまたまこの10年、確定拠出年金と深く関わってきたことから、こうした雑誌の取材を受けたり、寄稿をしていますが、「本当はもっともっと言いたい!」ということがいくつかあります。

そこで今回のコラムでは「AllAbout限定!全部本音で10年の401kについて語ります」という企画をしてみたいと思います。

401k、10年で400万人!これをどう考えるか

さて、10年の確定拠出年金の評価で「はやっていない」というものがあります。ほとんど条件反射的に書かれる枕詞になっています。

私に言わせれば「知らないで言っているだけでしょう!」と思います。まず、確定拠出年金は400万人の利用者がいる制度になっています。これは会社員の8人に1人が401kということです。規模で言えば、日本の退職給付制度として3番目です。おそらく数年後には第2位の制度になると考えられます。ちなみに第1位の制度でも利用者規模は740万人です。

10年で、401kが日本に2000万人まで普及すると考えていたのでしたら、それはもともとあり得ない前提でした(かつてバブル経済のピーク時でも、企業年金制度全部の対象者合計がようやく2000万人程度)。
なんとなく「はやっていない」とマスコミが書くことで、実態を知らない人がなんとなく「はやっていないんだ」と思ってしまうわけです。これは困ったことだなあと思います。

400万人という規模は、何十年もやってきた中小企業退職金共済を追い抜いていますし、過去の企業年金10年の普及ペースと比べても悪いものではありません。たぶん、ちょうどいいペースではないでしょうか。

そして、次の10年も、日本版401kは普及し続けるでしょうし、減ることはないでしょう。企業が401kを採用したら、実は制度を廃止することはほとんど考えられないからです(仮に廃止しても個人型401kの利用者が増えることになり、401kの規模は縮小することはないし、そのケアを会社はやらなくてはいけない)。

それよりも、400万人の401k利用者というのは、社会的にとても大きなインパクトがあるのです。

400万人に投資教育の実績は実はすごい!

日本版401kが400万人に普及しているといいましたが、これは「日本で400万人に本格的に投資教育が行われた」という意味でもあります。

わが国において、「貯蓄から投資へ」という声はたくさんあがりましたが、実態としてどのように投資教育を行うかは難しい問題でした。もともと投資に興味があるお金持ちに投資教育するのではなく、「本当は興味がない」「ちょっと興味はあるけどわざわざ勉強したいと思わない」人たちに投資教育を提供することは実はとても困難だったからです。
例えば証券会社や業界団体が投資セミナーを開催しても、こうした人たちは足を運んでくれません。

しかも、こうした層はお金持ち(富裕層)ではありません。しかし、本当はこうした人たちほど資産形成の手段として資産運用を活用する必要性が高まっています。

「会社の運用リスクを従業員に押しつけた」と皮肉られることの多い日本版401kですが、実は「投資教育の基礎を400万人に実施した」といえるのです。これは法令上のルールに則って義務づけられているため、会社も1回は少なくとも実施しています。(本当はもっと何度もやるべきですが)

また、投資教育の項目についても法令上の整理があったため、個別商品のPRは禁止されるなど金融機関に制約が課せられています。金融機関の職員もフェアな投資説明を行っています(何度かお忍びで投資教育を見学したことがありますが、適切な取り組みでした)。

アメリカでは401kで初めて投資信託を買った、という人が多く、これがアメリカの投資信託マーケットの急拡大に寄与したといわれています。日本でも、地道に行われた400万人の投資教育がきっとプラスの影響を金融市場に与えることでしょう

すでにいくつかの調査では、日本版401k加入者とそうでない人の間で、投資に関する理解・行動や年金制度に関する興味・理解に大きな違いがあるとされています。特に「定期的な購入をする」「少々の値動きにびくつかず投資を続ける」「焦って売らない」「インデックス運用を長期目線で行う」というのは、日本に未だない長期投資家層の誕生と考えられます。

この10年で、400万人にしっかりとした投資教育を実施した例は他にありません。学校教育でも、証券業界のセミナー等でも400万人には及ばないでしょうし、実際に投資を行わせてはいませんし、教育の内容や質でも401kほどしっかり行われている例はないはずです。

「貯蓄から投資へ」を本当に形にできるのは、401kになるかもしれません。この「10年で400万人の投資教育」はもっと評価されるべきだと私は考えます。

→日本版401kはリスクの押しつけでなく「あなたの権利を守る」!次ページへ
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