今回は日本のアルプスの中でも、中央アルプスに注目。木曽駒ヶ岳にかかる中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイとロープウェイで登った先にある千畳敷カールの紅葉・黄葉をご紹介します。
日本国内では数少ない氷河が残した貴重な地形を目の前で見られると共に、里よりも一足も二足も早く秋の紅葉を楽しめる素敵な場所ですよ。
<目次>
大自然の中へ誘う中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ
中央アルプスとは、木曽川が刻んだ木曽谷と天竜川が流れる伊那谷に挟まれた木曽山脈のこと。最高峰である木曽駒ヶ岳(標高2995メートル)を中心にして標高2000メートル以上の山々が南北に連なり、伊那谷や木曽谷からは美しい稜線を眺めることができます。 その中央アルプスの懐深くへ観光客でも行けるようにしたのが、1967年(昭和42年)開業の中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイです。 中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ(Googleマップ)は、しらび平から宝剣岳のすぐ近くにある千畳敷までを結ぶ全長2.3キロのロープウェイ。両駅間の高低差は950メートルあり、これは日本国内のロープウェイではNo.1。またロープウェイの終点、千畳敷駅の標高は2612メートルに位置しており、日本国内で最も高い所にある駅です。
ちなみに、登山以外の目的で観光客が気軽に訪れることができる場所としては、バスで行ける北アルプス・乗鞍岳の畳平(標高2702メートル)に次いで日本国内で2番目の高さ。富士スバルラインの富士山五合目(標高2305メートル)よりも高い位置にあります。
路線バスに乗ってロープウェイの駅へ
千畳敷へ向かう中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイへのアクセスは、JR飯田線の駒ヶ根駅(Googleマップ)がスタート地点。ここから路線バス「駒ヶ岳ロープウェイ駅」行きに乗車します。 駒ヶ根駅から終点の駒ヶ岳ロープウェイ駅バス停までは約1時間。この間に一気に1000メートル近くの標高差を登ります。なおマイカーや観光バスで訪れる場合でも、駒ヶ岳ロープウェイの駅には直接行くことができません。駒ヶ根高原の菅の台(Googleマップ)にある駐車場に車を置いて、駒ヶ岳ロープウェイ駅行きの路線バスに乗り換える必要があります。
菅の台から先はバス1台がやっと通れる程度の険しい山道。ヘアピンカーブが連続するところも多いので、車酔いに弱い方はあらかじめ酔い止めを服用しておいた方が良いですね。 終点の駒ヶ岳ロープウェイ駅バス停に隣接する建物が、中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイのしらび平駅(Googleマップ)です。
しらび平駅発登りロープウェイの整理券番号別の乗車予定時刻一覧
この日は10時50分に赤色の整理券「0928」を受け取りました
乗車予定は13時38分なので「2時間48分待ち」!(2015年9月21日撮影)
混雑時は臨時便が運行されるものの、ロープウェイの乗車までは1時間から最大3時間程度待ち合わせることがあります。整理券の番号毎に乗車予定時刻の目安がホワイトボードに掲示されますので、確認しておきましょう。 もし待ち時間が長いようであれば、しらび平駅からハイキングコースを15分程登った所にある日暮の滝まで往復することも可能です。
ロープウェイでの空中散歩
乗車予定時刻が近づいたら、係の方の案内に従ってロープウェイの改札へ。ロープウェイに乗り込むと待望の空中散歩が始まります。ロープウェイは、赤い鉄塔をいくつも経由しながら深く刻まれた谷を眼下に見下ろしつつ千畳敷へ登っていきます。 途中、前方には落差25メートルの日暮の滝や、落差60メートルの三段の滝が見えますので見逃さないように。 秋ならではのロープウェイの楽しみは、高度を稼ぐに連れて崖に生える木々が黄色や赤色に色づいていく風景。 しらび平から千畳敷までの7分30秒の乗車時間の間に、急斜面に張り付いた木々の紅葉・黄葉など様々な風景を鑑賞することができます。紅葉の見頃は標高の高い方で例年10月上旬~中旬、しらび平周辺で10月中旬~11月上旬です。
日本最高所の駅、千畳敷に到着
そしてロープウェイは日本最高所の駅、千畳敷駅に到着。ここにはレストランや売店だけでなく宿泊施設までそろっています。千畳敷駅発下りロープウェイの整理券番号別の乗車予定時刻一覧
この日は13時40分に青色の整理券「0724」を受け取りました
乗車予定は16時17分なので「2時間37分待ち」!(2015年9月21日撮影)
※ただしあくまで予定時間ですので、ロープウェイの乗車人数によっては時間が早まることもあります。
氷河が生み出した貴重な絶景、千畳敷カール
千畳敷(Googleマップ)は、中央アルプスの宝剣岳(標高2931メートル)の下に広がる場所。遥か2万年前のこと、ここにあった氷河が長い歳月をかけて山を削ったことによりできた「カール(圏谷・けんこく)」と呼ばれる日本国内ではとても珍しい地形です。川が山を削るとV字型の谷ができますが、氷河が山を削るとU字型の谷ができあがります。険しい山の中に現れたお椀のような形の千畳敷カールは、夏になると数多くの高山植物が見られ、見通しが良い時は麓である駒ヶ根の街まで見下ろすことができます。 千畳敷カールの中は、観光客でもゆっくりと歩けるハイキングコースが整備されていますので、大自然を堪能することが可能です。それなりに坂の上り下りがありますので、運動靴など歩きやすい靴を履きましょう。 ハイキングコースでのハイライトは、荒々しく岩がそそり立つ宝剣岳から延びる中央アルプスの稜線。目の前に山が迫る迫力は忘れられない風景になりますよ。
ダイナミックな中央アルプスの山と紅葉・黄葉のコラボレーション
標高が高いこともあり、千畳敷の最高気温は真夏でも20度前後までしか上がりません。秋には10度前後まで平均気温が下がるため、例年9月下旬から10月上旬にかけて里より一足も二足も早く黄色く色づくダケカンバや赤く色づくナナカマドが見られます。 岩だらけの山の一部が赤や黄色に色づく風景は、秋限定のもの。ダイナミックな中央アルプスの山の風景と早めの紅葉・黄葉を同時に楽しむことができますよ。 山は見る位置によって様々な表情を見せてくれますので、自分好みの風景を見つけて、想い出として持ち帰りましょう。 ただ紅葉が見られるということはそれだけ寒いということ。中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイのWebサイトでは、季節に応じた千畳敷カール散策時のおすすめの服装を紹介していますので、参考にすると良いですね。ちなみにガイドが訪れた時は、しらび平で16度前後、千畳敷で10度前後でしたので、しらび平でジャケットの下にセーターを1枚着込んで登りました。風が吹くと手がかじかむくらいでしたので、手袋は携行すると良いでしょう。 なお千畳敷カールは、標高2600メートルを超える高山ゆえにお天気はめまぐるしく変わることがあります。
ガイドが初めて訪れた時は、しらび平までは晴れていたものの、千畳敷に到着する直前に濃い霧に覆われてしまい、何も見えずじまい。しばらくの間は霧の中を散策する形でしたが、幸いにして20分強だけ霧が晴れる時間がありました。 気象条件によっては、残念ながら何も見えないこともあります。絶景が見られた時は運が良かったと考えて、思う存分楽しみましょう。
山から下りてきたら、温泉で温まって
駒ヶ根駅としらび平を結ぶ路線バスが通る菅の台付近は駒ヶ根高原と呼ばれ、早太郎(はやたろう)温泉が湧き出しています。宿泊施設以外に日帰り入浴施設もあり、千畳敷の散策で冷え切った体を温めるにはちょうど良いロケーションなので、時間があれば帰りに温まっていくと良いでしょう。氷河が残した絶景と紅葉が楽しめる千畳敷カールと中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイをご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
駒ヶ根のある伊那谷を含めた信州は実りの秋も楽しめます。駒ヶ根名物のソースカツ丼や伊那名物のローメンなどご当地グルメも楽しめますので、ゆっくり時間をかけて中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイと千畳敷カールを訪れてみてください。
中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ、千畳敷へのアクセス
地図:Googleマップアクセス:
<鉄道> ・新宿からJR東日本 中央線 特急「あずさ」で岡谷へ。飯田線の普通列車に乗り換えて駒ヶ根駅下車。
駒ヶ根駅からは、伊那バスまたは中央アルプス観光バス 駒ヶ岳ロープウェイ駅行きに乗車して、終点 下車。
名古屋方面からは、中央線 特急「しなの」で塩尻まで乗車し、岡谷または辰野を経由して飯田線に乗り換えます。
<高速バス>
・東京からは新宿高速バスターミナル(バスタ新宿)より駒ヶ根、飯田方面に向かう中央道高速バスに乗車
・名古屋からは名鉄バスセンターより、大阪からは阪急梅田駅より、駒ヶ根、伊那方面に向かう中央道高速バスに乗車。名古屋から1便のみ菅の台バスセンターへ立ち寄る便があります。
駒ヶ根車庫行きの場合は、駒ヶ根バスターミナルで下車後、すずらん通りバス停(徒歩3分)より駒ヶ岳ロープウェイ駅行きの路線バスに乗り換え。
新宿から飯田行き、名古屋から伊那行きの場合は、駒ヶ根インターチェンジバス停で下車後、女体入口バス停(徒歩3分)より駒ヶ岳ロープウェイ駅行きの路線バスに乗り換え。
※新宿高速バスターミナル(バスタ新宿)、名鉄バスセンター、阪急梅田駅から駒ヶ岳ロープウェイまで、高速バス・路線バス・ロープウェイのきっぷをセットにした割引往復切符が通年発売されています。
<車> ・中央道 駒ヶ根インターチェンジより、県道75号線に入り、菅の台へ。
有料駐車場に車を止めて、駒ヶ岳ロープウェイ駅行きの路線バスに乗り換え。
【関連サイト】
◇「紅葉・黄葉の名所」に、「名所・旧跡」ガイドで紅葉の名所を紹介した記事の一覧をまとめてあります。
◇「甲信越の名所」に、「名所・旧跡」ガイドで甲信越地方の名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。