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ドラマを見るのが当たり前でなくなったので書きました

今回は一味違ったドラマ本『なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか?』の著者インタビューしました。カツ丼は刑事の人情の象徴、既存のパターンを最も詰め込んでいるのは韓流ドラマなど興味深いはなしを聞けました。もっともびっくりしたのは本を書いた理由が「ドラマを見るのが当り前でなくなったから」。その意図するところは?

黒田 昭彦

執筆者:黒田 昭彦

ドラマガイド

今回は一味違ったドラマ本『なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか?』を著者、日本大学芸術学部放送学科の中町綾子教授のインタビューとともに紹介します。

カツ丼は刑事の人情の象徴

その前にタイトルの投げかける疑問が気になるのでまず解説。

刑事が犯人を取り調べるときにカツ丼を出すパターンは1955年、森繁久彌主演の映画『警察日記』で使われたのが初めてだそうです。

カツ丼

            カツ丼

このパターンが有名になったのは、1963年に実際におきた「吉展ちゃん誘拐殺人事件」の時。容疑者にカツ丼を出して自供を引き出したといわれました。
ただし「帝銀事件」「三億円事件」なども担当した平塚八兵衛刑事は回顧録でカツ丼などを一切だしてないと否定しています。カツ丼を出したといわれたのは「刑事は人情をもって取り調べしてほしい」という人々の願望だったようです。

それを平塚八兵衛をモデルにしたといわれる『七人の刑事』の沢田部長刑事(芦田伸介)や『太陽にほえろ!』の山さんこと山村刑事(露口茂)をはじめとした刑事ドラマの登場人物たちが引き継いできた、と定番パターンが定着した理由について解説しています。

この本では刑事ドラマ以外にも恋愛ドラマ、ホームドラマ、学園ドラマ、職場を舞台にしたドラマについて、こういったさまざまな「ベタ」パターンがなぜ生まれたのか、意味するものはなにかについて解説しています。


分析だけでなくヒアリングも

ガイド:
引きつけられるタイトルですが、インパクトがありすぎてテレビドラマのよくあるパターンについて紹介する雑学本だと誤解されるんじゃないでしょうか?

中町:
そうですね。だけどそうはしたくなかったんです。この本を書く目的はドラマの歴史を築いた人たち、作り手と見る人の両方の中にある愛すべき記憶をたずね歩き、その意味を見つめ直すことでした。初期のドラマをつくってきた方々が高齢になられて、話を聞いておきたいとも思いました。

『七人の刑事』で演出をされた方をはじめ1960年代から数多くのドラマを演出された方にも刑事ドラマの取り調べシーンのカツ丼について聞きました。当時は脚本や演出でそこまで指定しなかった。小道具さんが判断して準備したんじゃないかというお話もありました。
渡辺謙が平塚八兵衛刑事を演じた『刑事一代』を演出した石橋冠さんにも話を聞きました。『刑事一代』ではカツ丼ではなく平塚刑事(渡辺謙)が自分で作った大きな握り飯とナスとキュウリのぬか漬けの弁当を容疑者に差し出します。カツ丼ではありませんが、やはり日本人ならではの食べ物を通して八兵衛の誠意と人柄を示したそうです。

次は「もはやドラマを見ることは当たり前でない?

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