松田選手

松田選手の急死は衝撃的でした

サッカー、元横浜Fマリノスの松田直樹選手が8月4日に急性心筋梗塞で急逝されました。同選手のこれまでの活躍や実績、人柄を偲び、ご冥福をお祈りします。

こうした心臓突然死によって将来ある若者を含めた多くの方々が悲劇に見舞われることを予防すべく、解説を加えたくおもいます。

若いかた、とくにアスリートに代表される体力のある方でも心臓突然死は起こることがあります。以下にその代表例を示します。

急性心筋梗塞 

心筋梗塞

冠動脈(赤い線)が詰まると心筋梗塞になります

新聞などの報道でも松田選手の死因はこの急性心筋梗塞と伝えられています。心筋梗塞といえば、どちらかと言えば中高年の方に多いという印象をお持ちの方もおられるでしょう。たしかに若者には心筋梗塞はそう多いわけではありません。しかし冠動脈が動脈硬化を起こしやすい背景をお持ちの方は、若くても心筋梗塞になる場合があります。

松田選手の場合、冠動脈の回旋枝の慢性閉塞が伝えられており、急死される直前には別の大きな血管が閉塞したなどの恐れがあったものと推察されています。もしそうなると心臓は突然停止あるいは心室細動に陥る恐れが強く、心臓の筋肉への打撃が大きいと、そのあと補助循環つまり人工心臓などを使っても回復は難しいことが考えられます。やはり予防が一番です。それには背景を治すことが必要です。若い世代で心筋梗塞になり得るケースは、以下のような場合です。

若い世代の心筋梗塞の原因・背景

■家族性高コレステロール血症
コレステロール

コレステロールの病気にもより危険なものがあります

この場合コレステロールの値が大変高くなり、普通では考えられないスピードで動脈硬化が進行することがあります。この病気の場合は一般の方のコレステロールの管理よりもしっかりした管理が必要です。食事や運動、定期健診、血液検査などでコレステロール(善玉、悪玉)、中性脂肪などをできるだけ適正化することが大切です。

■重症糖尿病
重症糖尿病の患者さんも油断は禁物です。とくにインシュリン注射が必要な方や血糖値のコントロールがうまく行っていない方などですね。専門家と相談しつつ、食事、運動、必要な薬や注射をきちんと行うことが体とくに動脈を守ります。

■幼児期の川崎病
動脈

動脈の構造が壊れると危険なことが起こります

こどもの頃に冠動脈が瘤(こぶのように膨れます)になった方などは、冠動脈が動脈硬化を予防する力を失っていること場合があり、油断はできません。

■スパスム
ときにスパスムと呼ばれる冠動脈の痙攣状態で、心臓への血流が止まることもあります。検査でしらべても普段は冠動脈が一見正常に見えるため注意がひつようです。

■冠動脈の構造的な疾患
冠動脈起始異常などの冠動脈の構造的な疾患なども可能性はあります。これはサッカー選手などの突然死の原因のひとつといわれています。MDCT検査で診断はできます。

これらのいずれの場合も、受け持ち医と相談しつつ、冠動脈の定期健診を勧めます。心電図や胸部レントゲンその他のルーチン検査から、場合によってはMDCTなどで実際に冠動脈を画像で直接見ることが役立つ場合もあります。

不整脈

不整脈

心電図や24時間心電図で不整脈は診断できます

上記の急性心筋梗塞が発生した場合、心室細動や心室・粗動などの悪性不整脈が合併しやすく、もし合併すればそのままでは致命的となります。

しかし心筋梗塞でなくても同様の悪性の不整脈が発生することがあります。たとえばブルガダ症候群やQT延長症候群その他の状態です。心筋症やサルコイドーシス(サルコイド心)などでも起こることがあります。

こうした病気は平素の健康診断や、動悸を感じたときに医師に相談することで、早期に詳細まで調べ、専門医とともに対策を立てることが重要です。またご家族にこうした不整脈の病気がある場合、念のため一度検査を受けられることを勧めます。

急性大動脈解離

大動脈解離

大動脈解離は突然死の恐れがあり要注意です。とくにA型解離では救命のために緊急手術が必要です。

若い方が突然心臓死する病気として急性大動脈解離も忘れてはなりません。胸や背中に突然、激痛が起こります。この病気では大動脈の壁が内外に裂けて、それから破裂するか、大切な血管の枝をふさぎます。それによって突然死することがよくあります。

大動脈解離は若い方にもちょくちょく起こります。とくにマルファン症候群や大動脈二尖弁などの、大動脈壁が弱くなる状態のときには起こりやすいのです。大動脈がある程度以上拡張し大きくなった状態で、より解離は起こりやすいため、こうした結合組織の病気をお持ちの方は、大動脈の定期健診が勧められます。またあわせて血圧の管理も役に立ちます。とくに大動脈が拡張気味で高血圧もあるとなると、そのままでは危険です。

心筋症

心臓の筋肉の病気で、ポンプの役割をもつ左心室全体の壁が分厚くなる肥大型心筋症、左室の出口付近が狭くなる閉塞性肥大型心筋症(HOCM)、あるいは左室全体が大きくなり動きが悪くなる拡張型心筋症などがあります。

とくにHOCMは無理な運動などで突然死することが知られています。遺伝することもあり、血縁の方にこうした病気の方がおられたら、いちど専門医に相談されると安心です。

肺塞栓

肺塞栓

肺動脈に血栓が詰まると肺塞栓になります

肺塞栓は近年は地震で家が壊れ、やむなく車の中などで避難生活していた方によく起こり、重症では突然死されるケースがあったことからあらためて注目されています。以前はエコノミークラス症候群として、長時間の飛行機の中で足を下げた状態で下肢静脈に血栓ができ、それが肺まで流れて肺血管を塞ぐことで突然死すると話題になったものです。

ポイントは足を長時間下げないこと、脱水を防ぐこと、なるべく頻繁に歩いたり下肢の筋肉を使うこと、これまで血栓ができた方は専門医と相談し、必要に応じて血栓予防のお薬を飲むことなどが勧められます。

脱水症

脱水

夏の暑い日には脱水にご注意を

脱水とひとくちに言っても軽いものから重いものまであります。重症はよく新聞に報道されているような、脱水から熱中症となり死亡されるケースですね。この暑い夏の季節には屋外にいると容易に脱水になりますし、昨今の節電の必要からエアコンを切ったり弱めてた状態では屋内でも脱水になることはあります。上記の疾患に脱水症が加わると一層危険になります。

脱水の予防はまず十分な飲水です。暑い日は汗の出方などによっては半日で2-3リッターの水分が必要なこともあり、要注意です。若くても内臓の病気がある方の場合は、夏の真昼にはあまり外で頑張りすぎないことも併せてお勧めします。

心臓突然死の予防とAEDの普及

以上、若い方でも起こり得る、心臓突然死について、その対策とともにお示ししました。油断なく、備えあれば憂いなし、で行きたいものです。そして松田選手はじめ前途ある若者が命を落とすような残念な病気を予防したいものです。またいざという時のAED(一般市民も使える電気的除細動器)がこうしたスポーツの場などにはぜひ必要だと考えます。松田選手が倒れた場所には残念ながらAEDは備え付けられてなかったそうです。

なおAll Aboutの健康記事の中に拙筆「心臓突然死の原因・メカニズム」「心臓突然死の予防・対策法」のページがありますので、これらもご参照ください。

またそれぞれの心臓病、血管病についてはAll About心臓・血管・血液の病気の該当ページをご覧ください。心臓血管外科手術がらみの情報は「心臓外科手術情報WEB」を参照してください。
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