一泊6万円!?
一泊1人6万3000円(平日)。まずはその価格が話題を呼ぶ隠れ宿が、西伊豆土肥に誕生した。
宿の名は、「富岳群青」(ふがくぐんじょう)。
姉妹館である無雙庵枇杷が3~4万円台であるのに比べ、もうワンランク高い値付け。
その自信はどこにあるのだろうかと、オープンしたての西伊豆へ飛んだ。
答えを先に言っておこう。価格は客層をあえて絞るためだろう。
ここは、自分自身で旅を演出できる人のための隠れ宿だ。
例えば、海外の富裕層の貸切ウエディングが入っているという。
つまり、演出次第で、うんと楽しめる旅館だといえる。
いざ、エスコートツアーへ
運がよければ青富士が
もちろん、費用は全額男性持ちだ。6万円の宿を割り勘で払うヤボはいない。
この日も友人のパイロット、チャーリーに頼んでヘリを仕立ててもらおうと思った。
新木場の東京ヘリポートから横浜ランドマークタワーを横切り、湘南を抜け、伊豆まで飛んでも1時間で着く。リムジンで宿まで走らせても片道20万はかからない。
ただ、この日、チャーリーには先約があった。しかたない。ノーマルだが、ヘリはやめ、船で行くことにしよう。集合は、12時に静岡駅だ。
彼女にはひかりのグリーンのチケットを渡して、新幹線に先乗りし、静岡でレンタカーをピックアップしておく。夏なら、マツダのロードスター。向かうは、土肥行きの駿河湾フェリーが出港する清水港だ。
晴れた日には富士山を眺めながら1時間のクルーズ。カップルシートのある、階上の特別室がおすすめだ。西伊豆へのアクセスには、船がお似合いと覚えておくといい。
土肥港からの田舎道の快適なエンジン音を楽しむ間もなく、小さな看板の角をまがる。急坂を上ると、小さな石の校門。そう、ここは昔、小学校だった。水盤の向こうにある玄関に車を着ける。15時ちょっと前。
広々とした100平米の部屋にチェックイン
ウェルカムドリンクには、頼んでおいたシャンパン。夏の日差しを浴びて火照った体をクールダウンさせる。何も頼まなければコーヒーか紅茶だ。あえて彼女の好きなドリンクを頼んでおく。そのくらいの演出はしておこう。客室は、水盤の縁に8室が並んでいる。「潮満つ」「沖の嶺」……海にちなんだ室名の客間は、全てが100平米のスイートタイプで、一部屋ごと家具の趣向が違う。ダークな配色のシックな部屋がよいか、カサブランカに旅をしたような気分になるトランクケースが配された部屋か、シャンデリアの部屋か、和のテイストを加えた部屋か、好みを事前に指定しておきたい。最近は、インターネットでワンクリックして予約終了、という手が多いが、これはもったいない。宿にはいろいろとリクエストをしてみるものだ。ただし、満室の際はご容赦を。
広々とした部屋には露天風呂付きのテラスと前庭が広がり、その向こうには群青色の海が広がっている。晴れた日には、富士山が海越しに見えるという。
チェックインすると、iPadが一台渡される。今日のメニューや館内案内はこれを見て調べることができるし、ドリンクのチョイスも事前に考えておけるので都合がいい。BGMもこれ一台で済む。
まだ、陽が明るいが、オートブラインドを下ろせば、暗く静かな時間が訪れる。下ろしたブラインドの内側では、テーブルセッティングをしつつ、まずは彼女には、テラスの開放的な露天風呂(八木沢温泉)で汗を流してもらおう。室内にもジェットバスがあるので、同時に使うこともできる。