性感染症・STD/性器ヘルペス

「性器ヘルペス」の症状・治療法…初発・再発で違いも

【産婦人科医が解説】女性の性感染症の中で、クラミジアに次いで多い「性器ヘルペス」。症状は初発と再発、男性と女性で異なります。性器ヘルペスはウイルスに感染しても本人の自覚症状がないままパートナーに感染させてしまうリスクがある他、出産時の母子感染により赤ちゃんの生命を脅かす危険もあり、決して軽視できない病気です。性器ヘルペスの原因や症状、治療・予防法について解説します。

清水 なほみ

執筆者:清水 なほみ

産婦人科医 / 女性の病気ガイド

「性器ヘルペス」とは……女性ではクラミジアに次いで多いSTD

カップル

出産の時にヘルペスの症状があると母子感染のリスクになります

女性の性感染症(STD)の中でクラミジアに次いで多い「性器ヘルペス」。原因となる単純ヘルペスウイルスに感染しても、はっきりとした自覚症状がないまま、パートナーに感染させる力だけ持っている状態になることがあるため、自分が感染源である自覚がないままウイルスを蔓延させてしまう可能性があります。

外陰部の痒みと痛みを訴えて受診された既婚の患者様で、ご本人は明らかに性器ヘルペスの初発なのに、ご主人には全く何も症状がないというケースもありました。性器ヘルペスの原因や症状、治療・再発予防法について解説します。
 

性器ヘルペスの原因・感染経路

性器ヘルペスは、性行為による単純ヘルペスウイルス1型や2型のウイルス感染が原因。口唇に感染したヘルペスウイルスが、オーラルセックスにより性器に感染することもあります。

感染してすぐに症状が出る場合と、感染した時は症状が出ずに潜伏し、しばらく経ってから初めて症状が出る場合があります。そのため、感染源となった性行為と発症の時期がずれることがあります。
 

初発感染と再発性感染……性器ヘルペスの症状・潜伏期間

■男性の性器ヘルペスの症状
初発の場合、2~10日間の潜伏後に性器に痒みや違和感が出現します。さらに進行すると、小さな水ぶくれや潰瘍が複数でき、ヒリヒリする感じやしみるような痛みが出たり、足の付け根のリンパ節が腫れたりします。尿道から分泌物が出ることもあります。

再発の場合は、性器だけでなくお尻や太ももなどにも潰瘍ができることがあります。初発よりも症状は軽く、治療期間も短くなります。潰瘍ができるのと同時に、全身のだるさや足の違和感が出現することもあります。

■女性の性器ヘルペスの症状
初発の場合、2~10日間の潜伏後に比較的突然外陰部の痛みが出現します。外陰部に複数の水ぶくれや潰瘍ができ、排尿時にしみたり、痛みのせいで排尿や歩行が困難になることもあります。38℃以上の熱が出ることもあり、足の付け根のリンパ節が腫れて押さえると痛みを伴います。ときに強い頭痛や首筋が硬くなるような症状が出たり、尿や便が出しにくいといった神経麻痺の症状が出ることもあります。

再発の場合、初発よりも症状は軽く、水ぶくれの数も少なくて済むことがほとんど。再発の前に、外陰部の違和感や太ももから足先にかけてのピリピリする感じなどの前兆が出ることもあります。一度感染すると、ウイルスは体内に潜伏して完全に排除されることはないため、何度も再発してしまう場合があります。

 

性器ヘルペスと妊娠・出産時のリスク……赤ちゃんに危険も

女性の場合、出産時に性器からヘルペスウイルスが排出されていると、新生児に感染し、重篤なヘルペス感染症を引き起こすことがあります。新生児ヘルペスは死に至ることもあるため、感染リスクが高い場合は帝王切開を行います。

そのため、妊娠中にヘルペスに感染した場合や、過去にヘルペスに感染したことがあり妊娠中に再発を繰り返している場合は注意が必要です。
 

性器ヘルペスの初発・再発治療法

ヘルペスウイルスに対する飲み薬や塗り薬で治療を行います。初発治療では5~10日間の服用、重症な場合は抗ウイルス薬の点滴を行うこともあります。また、痛みが強く排尿が難しい場合は、改善するまで入院して尿の管を入れておくこともあります。

再発を年6回以上繰り返す場合は、症状の有無に関係なく抗ウイルス薬を飲み続ける「再発抑制療法」を行います。
 

性器ヘルペスの予防法

コンドームを毎回初めから正しく使うことが最も有効な予防法です。ただし、ヘルペスウイルスが肛門周囲など性器以外の場所にいた場合は、コンドームだけでは防ぎきれないこともあります。お互いに性器や肛門周囲に水ぶくれなどのできものができていないかを確認し、疑わしい場合は接触しないことも大切です。

また、再発は体力や免疫力が落ちることで繰り返しやすくなるため、規則正しい生活やバランスのいい食事など、免疫力を落とさないように心がけましょう。
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