「仮設住宅建設に地元企業も」というが…
問題点のうち、今回取り上げるのは「仮設住宅の建設を地元業者に」ということ。言葉を変えると「大手ハウスメーカーだけが仮設住宅の建設で潤い、地元の建設業者に仕事と利益が回らない」ということだと思います。最近、マスコミ報道でよく指摘されるようになってきましたが、ことの構図は彼らがいうほど単純ではないようです。東日本大震災による仮設住宅の建設は、当初から用地確保の問題がネックに。また民間の賃貸住宅の入居する被災者も多く、需要と供給の全体像がつかめないという問題点もある
なぜプレ協が主体になるのか。それはこの団体に仮設建物のメーカーが加盟していることが第一です。そして以前から各自治体と、大災害が発生した場合は仮設住宅の供給を行うという協定を結んでいたためでした。
プレ協は仮設住宅の性能や施工法の改善、各自治体との関係づくりなど災害対応のための準備をしていました。仮設住宅といっても建設はそれほど容易なわけではなく、しっかりとした技術や経験、人脈といった裏付けが必要なのです。
通常の災害ならば仮設建物のメーカーだけで対応するのですが、今回の震災は彼らだけでは対応できる規模ではなく、プレ協に加盟するハウスメーカーが生産ラインを裂いて、不足分を補っているというのが実情です。
供給に苦労・困惑するハウスメーカーも
というわけで仮設住宅の供給の主力となったプレ協とハウスメーカーですが、彼らにとってこの仮設住宅の供給が「儲けの種」になっているかというと、それは事実ではありません。というのは、ハウスメーカーにとって仮設住宅は本業ではないからです。通常とは異なるものを製造する場合、収支の勘定は合わないものです。供給の見込みも変わりました。当初、国から求められていた供給量は全体で7万戸超でしたが、現在では1万戸から2万戸下ブレしています。
ハウスメーカー生産工場のストックヤード。一般顧客向けに混じり、用地確保の問題から被災地に運ばれるのを待っている仮設住宅用の部資材もあるという
元々、仮設住宅の供給はスピード勝負。ある程度準備があったプレハブ系ハウスメーカーでも四苦八苦しているのが実情のなか、地域の業者がそうした課題を克服できるとは言い難いと思います。
もっとも、被災された地域の業者が仮設住宅の建設に参加し少しでも利益を得て、それが復興につながればいいと、私も思います。ただ、そんな単純な思いこみを許さないのが東日本大震災の規模の大きさなのです。
とにかく、今、被災地で仮設住宅建設に従事している方々は本当に頑張っておられます。ですから、理由はともあれ批判が出てくるのは残念でなりません。政治や行政のせいにするわけではありませんが、願わくば全体と地域をうまく調整するリーダーが早く現れることを期待しています。