揺れもOK!歯の天然免震装置「歯根膜」の仕組み
歯は毎日噛むことでかなりの衝撃を受けます。それらの衝撃から歯を守ってくれている組織が歯根膜。健康な歯でも、指で前後に揺らすと多少揺れる感じがするのは、この組織があるためです。建物の免震装置と同じような免震構造を持っています。歯の免震装置・「歯根膜」がある場所
歯の根の周囲(緑)全てに存在している
歯の根の表面では、0.1mm程度の薄いセメント質が、象牙質の表面を覆っています。歯とあごの骨の間には0.2mm程度の隙間がありますが、セメント質とあごの骨の間にあるのが歯根膜。
厚さは概ね0.2mm程度の繊維状の組織です。 健康な歯でも指で動かすと揺れるのは、この歯根膜の機能のおかげで異常ではありません。
歯の免震装置・「歯根膜」の構造と機能
歯根膜内部では、歯とあごの隙間に無数の繊維が横断して歯を固定しています。その繊維の方向は一定方向ではなく、歯が動いても抵抗するよう、様々な角度に配置されています。イメージ的には噛む際の衝撃や、歯を引っ張っても抵抗するような繊維のじん帯です。歯根膜の機能は、衝撃吸収や、歯をあごの骨の中に留まるように弾力を持たせつつ固定する、噛んだ感触を脳に伝える役割など。さらに歯根膜は、衝撃を吸収するための繊維だけでなく、セメント質に栄養を補給するための血管も持っています。歯根膜からセメント質へ栄養を補給することで、実は私たちは多くのメリットを得ているのです。
良く歯の神経を抜くと歯に栄養が行かなくなると言いますが、歯そのものは抜けてしまうことはありません。それは神経を抜くことで栄養が行かなくなるのは歯の内部の象牙質だけだから。歯を固定している、骨~歯根膜~セメント質の部分は、外側から栄養が補給されるため、神経を抜いても歯が骨から外れて抜けずに使用することができます。もしセメント質が歯の内部から栄養を受け取っていれば、歯の神経を抜いてしまえば、歯も抜けてしまうでしょう。
意外と知らない!? 歯の免震装置・「歯根膜」トリビア
■ 歯根膜は歯の矯正に役立つ歯に力を加えると歯根膜や骨の血流が悪くなって、骨を溶かす細胞が現れて、歯を移動させることができるようになります。
■ 歯根膜が病気になることがある
許容以上の強い衝撃や、虫歯や歯周病などの細菌が入り込むなどすると、炎症を起こす。歯が浮いた感覚はこの歯根膜の炎症が原因です。
■ 歯根膜は現在は人工的に再現できない
チタン製の歯を埋め込むインプラント(人工歯根)に歯根膜は再現できていません。
■ 歯根膜は歯を抜く時に利用される
歯と骨の隙間に歯根膜があるおかげで、歯を緩めやすく抜くとき役立ちます。もし癒着していると、歯の周囲の骨を削全て削らなくてはならないので大変。
歯根膜の直接的メンテナンスはありませんが、歯周病が進行すれば、あごの骨が溶けてなくなり、歯根膜も無くなって歯が緩んでいきます。それにしても普段見えない歯の土台にすでに免震装置が備わっているなんて、すごいことですよね。