『ツリー・オブ・ライフ』母の優しさを懐かしむカラー
仕事に成功し、中年期を迎えたジャック(ショーン・ペン)は、1950年代、テキサスの街の少年時代に思いを馳せます。ジャックの記憶に分け入るようにストーリーが展開し、マリック監督の内面を映し出すような映像が広がります。11歳に成長したジャック(ハンター・マクラケン)は、 成功するためには「力」が必要だと考えている厳格な父(ブラッド・ピット)と、自然をめで慈愛に満ちた心で子供たちを包み込む優しい母(ジェシカ・チャステイン)の間で、常に葛藤していました。
■厳格な父を懐かしむウォームでグレイッシュなカラー
成功するためには「力」が必要だと考えている厳格な父(ブラッド・ピット)
ブラッド・ピットが登場する場面では、ウォームでグレイッシュなカラーがつかわれ、落ち着きや安らぎを覚えるような懐かしさが漂います。
■母の優しさを象徴するエレガントなフラワープリント
自然をめで慈愛に満ちた心で子供たちを包み込む優しい母(ジェシカ・チャステイン)
この場面でジェシカ・チャステインは、上品で奥ゆかしい雰囲気を醸し出すライトグレーに、夢や希望がふくらむような淡いイエローを組み合わせた、優しい印象のフラワープリントのワンピースを着用しています。
第二次世界大戦があった1940年代は、女性ファッションも活動的で実用的な「戦時ルック」が求められました。戦争が終結した1950年代は、ディオールの「ニュールック」に象徴されるように、女性ファッションは女性らしさを取り戻し、巨大な需要が生み出されるようになっていきます。ジェシカ・チャスティンが映画の中で着用した衣装は、当時の最先端のモードではありませんが、自然を象徴するグリーンやブルー、女性の優しさを表現する花柄やピンクなどが繰り返し登場し、慈愛に満ちた女性像を描き出しています。
【作品情報】
『ツリー・オブ・ライフ』
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
8月12日(金)より全国にてロードショー
次は、1930年代のハリウッド女優のような雰囲気を漂わせるコン・リーの衣装を見ていきましょう。