ワールドサッカー/欧州サッカー

バルサからJリーグが学ぶべき哲学(2ページ目)

5月28日のヨーロッパチャンピオンズリーグ決勝で、バルセロナがマンUを3-1で退け、優勝を成し遂げた。決勝でも守りに入らず攻撃的サッカーを貫いたバルサ。Jリーグチームもここから学んでほしいことがある。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

日本代表・Jリーグガイド

Jリーグチームもお手本にしたいバルサの哲学

ユナイテッドの戦いぶりも称賛に値するだろう。ゲームを膠着させることを考えれば、ディフェンス重視のゲームプランで臨む選択肢もあった。勝利至上主義に徹しても良かった。だが、相手の良さを消すことに執着せず、自分たちの長所をぶつけることに活路を見出そうとした。不必要なファウルで流れを断ち切ったり、リスタートに必要以上に時間をかけて相手のリズムを乱そうとしなかったのは、イングランドのクラブに伝統的に根付くものだろう。

自らのポテンシャルを総動員して、ユナイテッドはバルサに立ち向かった。そもそも能力を出し惜しみして勝てる相手ではないが、自分の力以上のものを出し切ろうとしていた。臆することない彼らの姿勢が、バルサの攻撃力を際立たせたのだ。

ひるがえって、Jリーグである。バルサのサッカーには100年以上の歴史があり、プロリーグ開幕から20年弱の日本のチームが目ざすには無理がある。それでも、バルサから学ぶことはできる。ユナイテッドとの一戦に臨んだバルサは、11人の先発のうち7人がスペイン人選手だった。そのうち6人は下部組織出身で、アルゼンチン人のメッシも同様である。グァルディオラ監督もクラブの生え抜きだ。バルサに憧れ、バルサで育った選手たちが、トップチームを支えている。

若年層からクラブの哲学に触れてきた彼らに、バルサのサッカーを説明する必要はない。誰が監督でも、どんな選手でも、バルサのサッカーは変わらないからだ。
チームのスタイルや哲学についての説明を必要としないクラブが、Jリーグにいくつあるだろうか。監督によってスタイルが変わるクラブが、まだまだ多数を占めていると感じられてならない。

攻撃的とか守備的と分類するのは簡単だが、観る者をひきつけるのは、そこから一歩先に進んだ哲学ではないかと僕は思う。同じ日本語でありながら方言があり、地方によって気質が違うように、サッカーにもクラブの色があっていい。あったほうが面白い。哲学やスタイルの構築には長い時間が必要だとしても、時間を短縮することはできるはずだ。そのために汗を流している姿を、いまこの瞬間のJリーグで感じたいのである。
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