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新・賃貸時代(1)なぜ改めて注目されるのか

東日本大震災で持ち家神話に陰りが出そうな中で、住宅各社がさらに訴求してきそうなのが「賃貸」分野である。しかも人口に比例する形で「東京一極集中化」が加速。そうした中で、大手ハウスメーカーが手がける低層賃貸住宅が、かつての“低層アパート” のイメージとは今は昔、目を見張るほどラグジュアリー化している。その進化を遂げた低層賃貸の例と各社の戦略をシリーズでご紹介。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

生涯未婚率3割という時代の「家のあり方」

私の専門は業界紙記者時代以来、「一戸建て」を自認してきた。しかし、「一戸建て」だけをウォッチングしていてはもはや、現代の若年ユーザーの「家づくり」をカバーすることはできなくなっている。マンションはもちろん、「家族で一生賃貸」「シェアリング」というように「家」の概念が急激に多様化しているからだ。それは住宅業界の事業再編が追いつかないほどスピードを増しているといってもいい。

結婚

生涯未婚率3割時代の賃貸の役割とは?

NHKのドキュメンタリー「無縁社会」がさまざまな話題を醸したが、そこに出てくる30~40~50代のシングル男女の言葉を聞けば、新設住宅着工81万戸という数字を聞く以上に「家も激変する」ことは如実に分かる。今や30~34歳男性の未婚率は東京で54.1%、女性で37.6%(総務省)、40歳男性の4割が未婚、生涯未婚率男性3割・女性2割という時代なのだ。

……ということで、もちろん危機感を抱いた住宅各社は数年前から「持ち家」供給から「賃貸」にシフトしている。が、各社が一斉に賃貸に向き始めた結果、当然ながら賃貸市場の激化と賃貸戸数の過剰供給も如実になっている。総務省の2008年調査によれば、日本の空室率は13.1%。前回調査時の2003年に比べ既に1%空室率が高まっている。

シニア

高齢者夫婦向け賃貸ニーズも高い

しかもその空家756万戸のうち半分以上の54.1%が賃貸住宅というから、その過剰供給ぶりが分かる。持ち家の空家率が10.2%に対し、賃貸の空家率は18.7%。国土交通省の「平成21年空家実態調査」によると、空家になっている住宅ストックの80.9%が賃貸。こうした数字を並べただけでも、各社の持ち家以上に厳しい賃貸事業環境が手に取れる。

ただ、そうは言っても手を引くわけにはいかない。前述の未婚率を見ても、先行き暗い持ち家市場よりは、まだうすら明るい希望がもてる市場が賃貸であり、リフォーム・高齢者介護分野も含めて多角的経営でリスク分散していかなければならない。その、厳しいけれどもリフォームよりは利益率が高いこともあり、3方向の追い風がかすかに吹きそうな気配があるのが、やはり「賃貸」分野なのだ。

相続税改正が追い風なるか

その追い風とは何か。一つは、相続税改正による基礎控除の引き下げだ。改正前は「基礎控除枠5000万円+相続人1人あたり1000万円」の計6000万円までの遺産相続であれば相続税はかからなかった。が、改正後は5000万円の基礎控除枠が3000万円に一気に引き下げられる。かつ相続人1人あたりも600万円に引き下げられる。かつ税率も相続額6億円以上は従来の50%→55%にひきあげられる。

お金

相続税基礎控除の2000万円引き下げの影響は少なくない…

この5%、2000万円の差は大きい。相続人が複数いればもっと差は大きくなる。相続財産に土地や建物の不動産などがあれば、3000万円は優に超えてしまうケースは増えるだろう。超えた分の半額を相続税として現金で納めなければならないとなると大変だ。仮に1000万超えてしまったら数百万円の納税になる。

こうした相続税の大改正で、新たに賃貸経営に乗り出す人が増えるのではないかという見方が業界には強い。
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