生涯未婚率3割という時代の「家のあり方」
私の専門は業界紙記者時代以来、「一戸建て」を自認してきた。しかし、「一戸建て」だけをウォッチングしていてはもはや、現代の若年ユーザーの「家づくり」をカバーすることはできなくなっている。マンションはもちろん、「家族で一生賃貸」「シェアリング」というように「家」の概念が急激に多様化しているからだ。それは住宅業界の事業再編が追いつかないほどスピードを増しているといってもいい。生涯未婚率3割時代の賃貸の役割とは?
……ということで、もちろん危機感を抱いた住宅各社は数年前から「持ち家」供給から「賃貸」にシフトしている。が、各社が一斉に賃貸に向き始めた結果、当然ながら賃貸市場の激化と賃貸戸数の過剰供給も如実になっている。総務省の2008年調査によれば、日本の空室率は13.1%。前回調査時の2003年に比べ既に1%空室率が高まっている。
高齢者夫婦向け賃貸ニーズも高い
ただ、そうは言っても手を引くわけにはいかない。前述の未婚率を見ても、先行き暗い持ち家市場よりは、まだうすら明るい希望がもてる市場が賃貸であり、リフォーム・高齢者介護分野も含めて多角的経営でリスク分散していかなければならない。その、厳しいけれどもリフォームよりは利益率が高いこともあり、3方向の追い風がかすかに吹きそうな気配があるのが、やはり「賃貸」分野なのだ。
相続税改正が追い風なるか
その追い風とは何か。一つは、相続税改正による基礎控除の引き下げだ。改正前は「基礎控除枠5000万円+相続人1人あたり1000万円」の計6000万円までの遺産相続であれば相続税はかからなかった。が、改正後は5000万円の基礎控除枠が3000万円に一気に引き下げられる。かつ相続人1人あたりも600万円に引き下げられる。かつ税率も相続額6億円以上は従来の50%→55%にひきあげられる。相続税基礎控除の2000万円引き下げの影響は少なくない…
こうした相続税の大改正で、新たに賃貸経営に乗り出す人が増えるのではないかという見方が業界には強い。