お国柄を象徴するブランド
1898年にルイ・ルノーによって創業されたルノー。1945年には国有化され、1947年には大衆向け小型車の4CV(写真)を大ヒットさせた。1990年に株式会社化、1996年には完全民営化され、今日に至っている
プジョーと並んで、ルノーもまた歴史の古いブランドだ。20世紀初頭には早くも日本へ輸入されているし、最近では日産自動車と提携するなど、我が国との関わりも実は深い。
他のフレンチブランドと同様に、基本的には実用車、庶民派のクルマ造りを続けている。それゆえ、大衆人気を盛り上げるため、モータースポーツ活動を積極的に行ってきたという点もまた、ほかのフレンチブランドとよく似ている。中でも1970年代後半における史上初のターボエンジンによるF1参戦とその成功は、モータースポーツ史のエポックであった。
欧州で大ヒットしたコンパクトハッチバックの5(サンク)。欧州乗用車史上最大の生産台数を誇る4(キャトル)の後継モデルとして1972年に登場した。市販車として初めて採用された樹脂バンパーをもつデザイン性と機能性で人気を博した
違いに驚きつつフツウに乗れる“マニアのクルマ”
合理的なフランス人のためのクルマ。加えて、日産という日本の大メーカーをアライアンスしているという事情もあり、国内マーケットにおける市販モデルの認知度は必ずしも高くないし、ルノー自身も必要以上の拡販を望んでいないフシがある。カングーやルノー・スポール(RS)といった特定の個性派モデル(裏を返せばルノー全体のブランドイメージを正確に伝えるというわけではないモデル)の導入に力を入れているワケは、そういう事情もあったのだ。というわけで、日本ではプジョーよりもマニアックなブランドというイメージが広がっている。それに応えるように、RSモデルなど、熱心なルノーマニアのみならず、広くクルマ好きを熱狂させる魅力をたたえたモデルが日本市場に供給されているのだった。
マニアのためのクルマ、だけれども、そもそも実用ブランドであるがゆえ、フツウの人が乗っても“違い”に驚きつつ、フツウに乗れてしまうというところが、日本におけるルノー車の魅力。クルマに“目覚める”には、格好のアイテムだ。