いよいよ着工、そして竣工!
いよいよ工事の始まりです
融資の内定をもらい、建築確認を申請して取得できれば、いよいよ工事契約(建設請負工事契約)となります。
しかしその前に、もし、老朽アパートの建て替えなど、借家人がいる場合には、立ち退きを求めて折衝したり、何らかの訳ありの近隣対策が必要な場合は近隣住民と折衝したり、先行してそれらの解決をはかる時間をみておくことも忘れてはいけません。
また、オーナーによっては、自宅と併用の賃貸住宅の場合、基本設計の依頼から融資の申し込みを行うあたりまでの時期に、
・ 工事期間中のご自分の仮住まいの選定
・ 引越しとその準備
・ 様々な片付け作業
……など、忙しい仕事が平行して生じます。
金融機関の融資が正式に決定される頃には、借家人の退去が済み、近隣には工事の実施が周知徹底されていて、すべての問題がクリアになっている状況が望ましいと言えます。不測の事態による中断も常に念頭に入れておきましょう。
さて、ついに着工です。木造2階建て。10戸のアパートが1棟の場合、着工から完成までは、3ヶ月程度が一般的ですが、余裕を見て、4ヶ月が工事期間に見積もられます。周到に準備したつもりでも、実際工事が始まると、様々な予期せぬハプニングが起こることは多いものです。
ちなみに、賃貸住宅における建設工事期間は、木造の場合は概ね、階数×1ヶ月+余裕1ヶ月と考えるとよいでしょう。
RC(鉄筋コンクリート)の場合は概ね、階数×1ヶ月+3ヶ月です。
10階建てRC造りのマンションですと、13ヶ月を要するのが一般的です。
ただし、地盤によっては基礎工事の期間が相当必要になる場合もありますので、基礎計画について充分にヒアリングしてください。
地鎮祭が挙行され、更地に地縄(じなわ)が張られる(具体的に敷地に紐を張り、配置を確認する)と、いよいよ建物のイメージが頭に湧いてきます。地鎮祭は宗教的な儀式でもあるため、オーナーによっては行わない場合もあるのですが、工事関係者の安全を祈願する心配りとして、大切にする人も少なくないようです。
さて3ヵ月後、工事は滞りなく進み、予定通りアパートが完成しました。この期間中、オーナーは管理会社と契約を結び、工事期間の後半からはすでに入居者募集が始まっています。管理会社との打ち合わせも、しっかりとスケジューリングすること忘れないでください。
スケジュールの参考モデル
たとえばハウスメーカーなどでは、賃貸住宅の入居・退去が多い2、3月に合わせ、下記のようなモデルを事前に用意しています。6月 オーナーからの相談を受ける
7月 マーケティング調査とプランニングを実施
8月 提案し、大枠での合意を得る(第1次判断)
9月 契約(第2次判断)
10月 さらに詳細を詰め、同時に建築確認を取得
11月 着工
12月
1月
2月 完成、引き渡し
3月 入居者との契約、入居開始
上記に該当するのは木造2階建て、10戸程度の建物を建てる場合で、実際の着工~完成までの期間は一般的には3ヶ月間くらいに収まります。しかし、工務店やハウスメーカーによっては1カ月ぐらい余分に必要としている場合もありますので、プラスαの余裕を見ておくことが慌てない秘訣です。
このようなスケジュールモデルをもとに、多くのハウスメーカーは4月から6月辺りを「キャンペーン期間」に設定し、土地オーナーへの営業を行うわけです。ひとつの目安としてよいでしょう。
ここまでの話を踏まえて、土地活用を思い立ってから完成・入居までのスケジュールを、以下に簡潔にまとめてみました。あくまでもひとつの例として参考にしてください。4月から3月までの1年間を追ってみました。
じっくり時間をかけて慎重な検討を
賃貸住宅の建築は、人生で例えるならば、結婚のようなものです。結婚はゴールではなく、スタートだと言われておりますが、賃貸経営も、建物の完成がゴールではなくスタートとなります。私から強くお伝えしたいことは、「より重要なのは契約後ではなく、契約前のプロセス」であるということなのです。
賃貸住宅建築は結婚のようなものです
幸せな人生を歩むためには、マーケティング調査・プランニングというとても大事な過程をじっくりと時間をかけることがとても重要です。その土地での賃貸住宅経営をどんな市場が支えてくれるのか。
その将来展望は?……「マーケティング調査」
どんな建物・設備・間取り・工夫で、その市場ニーズに応えるのか?……「プランニング」
賃貸住宅経営は20年、30年続く息の長い事業であると冒頭に申し上げました。そのためにもっとも大切なこと、それが、しっかりしたマーケティング調査とプランニングです。
重ねて申し上げますが、相談先が「とにかく契約を取りたい、建物を建てさせたい」と、オーナーの未来を考えることなく、目の前の契約を取ることだけに躍起になっていないか、注意を傾けましょう。
とはいえ、疑心暗鬼になり過ぎてもいけません。信頼関係の構築に時間をかけるという発想をもってください。慎重になり過ぎるあまり、何度も立ち止まり、他の候補にあたってみたりと、あまりにもぶれてしまうと、良縁が遠ざかることにもなりかねません。
悩み、迷うのは当然です。オーナーは、大きな投資をして、20年、30年の事業を始めようとしているのですから。そんな時は、土地活用の相談相手には、公益団体や公社といったパブリックな立場の団体・組織があることも思い出してください。そのほか、建設には直接関らない、コンサルタント会社や会計事務所など、第三者的な立場でアドバイスをしてくれる相手を探してみるのも一考です。
判断に行き詰まった場合は、それらに相談をもちかけ、セカンド・オピニオンを求めるのもよい方法です。