葬儀・葬式/葬儀の形態

震災でクローズアップされた「土葬」の現状(2ページ目)

ほぼ100%近い火葬率の日本にあって、今回の東日本大震災では土葬が行われました。多数の身元確認が困難なご遺体、ドライアイス不足、さらに地域の主要火葬場が被災し、交通網やライフラインの断絶、燃料不足などにより火葬が追いつかないという事態が発生したのです。

吉川 美津子

執筆者:吉川 美津子

葬儀・葬式・お墓ガイド


三回忌にあたる2年後には改めて火葬

火葬はご遺体との最後のお別れ。焼骨を拾い骨壷に納めることで心の落ち着きを取り戻すことができる人もいます

火葬はご遺体と最後のお別れ。焼骨を拾い骨壷に納めることで心の落ち着きを取り戻すことができる人もいます

今回土葬された方については、数年後に火葬されることを前提として埋葬されています。復興状況にもよりますが、おそらく三回忌にあたる2年後を目安に、自治体として方針が示される予定です。

土葬のお墓を掘り起こして火葬という点に違和感を感じる人も多いでしょう。しかし実は掘り起こしは、今回の震災に限ったことではなく、日本全国で現在もなお時折行われています。たとえば数十年前に土葬したお墓から遺骨を取り出して、改葬(別の墓地へ埋葬)する際も原則として遺骨を火葬しなければなりません。それは自治体の条例や墓地・霊園の規約などによって改葬先が土葬墓地として認められていないため、必ず焼骨にして埋葬する必要があるからです。

掘り起こしを前提としているためか、東松島市ではすでに遺族が自分で火葬場を予約し、いったん土葬したご遺体を掘り起こして火葬する動きも見られるようです。掘り起こしには自治体の許可が必要であるため、すべてのご遺体が同じような扱いになるとは限りませんが、今後も遺族による同様の火葬依頼は増えていくことでしょう。

土葬は非常識?

土葬は非常識な埋葬方法でもなければ、死者の尊厳を傷つける手荒な方法でもありません。それなのに土葬の決断をした遺族から「せめて火葬だけでもしてあげたかった」という声が多いのは何故でしょう。

「土葬に馴染みがない」「掘り起こしを前提としている」「先祖と同じお墓に入れてあげたい」「火葬して遺骨を手元においておきたい」など、さまざまな理由があるでしょう。また、「変わり果てた姿をそのままにした状態で土葬するのはしのびない」と火葬を希望する人もいます。

「火葬という当たり前のことを、当たり前にしてあげられない」思いは体験した方でないと知る由もりません。弔いとは何かを改めて考えさせられます。


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