ダム湖の畔で想い出を語り継ぐ桜、荘川桜
今回の行き先は【岐阜】
ダム湖の畔で想い出を語り継ぐ桜、荘川桜
今回は標高の高い所で咲く桜の中から、世界文化遺産・白川郷の南に位置する荘川桜(しょうかわざくら)をご紹介します。
満面の水をたたえるダム湖の畔に咲く桜なのですが、他の桜にはない歴史を抱えていて、その歴史を今後も語り継いでいく特別な桜でもあるのです。
ダム湖の畔に咲く美しい2本の桜
荘川桜(Yahoo! 地図情報)は、岐阜県北部の旧 荘川村(現在の高山市荘川町)にある桜の木。樹齢450年を越すと言われるアズマヒガンザクラが2本、満面の水をたたえるダム湖、御母衣湖(みぼろこ)を見下ろす国道156号線沿いの高台にあります。
岐阜県天然指定記念物にも指定されている荘川桜ですが、ずっとこの地で花を咲かせていた訳ではありません。元々はこの場所から少し離れた所にあり、ある理由でこの場所に移ってきたのでした。
ダム湖の底に沈む集落より移植された稀有な桜
荘川桜が今の場所に移ってきた理由、それはダムの建設でした。高度成長期を迎えた日本の旺盛な電力需要に応えるべく、水力発電所が多数建設されていた庄川の最上流に御母衣(みぼろ)ダムの建設が決まります。
このダム建設によって、ダム上流のエリアがダム湖の底に沈むことになりますが、このエリアの中に年輪を重ねた2本の桜の巨木がありました。
この桜の巨木がダム建設を担った電源開発の初代総裁である高碕達之助氏の目に留まり、ダムで水没しないエリアへ桜の巨木を移動させる……という世界でも例のないプロジェクトが始まります。
多くの人々の熱い思いの元にプロジェクトが遂行され、2本の桜の巨木はダム建設工事の一環で1960年(昭和35年)12月に無事移動に成功。
東洋一のロックフィルダムと称された御母衣ダムは1961年(昭和36年)に完成し、巨大なダム湖、御母衣湖の誕生と共に桜の巨木のふるさとはダムの底に沈んでいきました。
2本の桜の巨木は、移動の際に制約となった根や枝を伐採したため、しばらくの間は枝や葉を伸ばす状態に留まります。しかし長い年月をかけて移動先にしっかり根付き、今では四方に大きく枝を伸ばして立派な花を咲かせるようになりました。
後に「荘川桜」と命名された2本の桜は、桜にまつわるストーリーと共に会いに来るたくさんの方をいつでも優しく見守っています。
見頃は4月下旬から5月上旬
荘川桜は標高760メートル前後という高い所にあるので、桜の開花時期は遅く、例年だと4月下旬から5月上旬にかけて見頃を迎えます。花の咲き方はその年の気候や鳥につぼみを食べられてしまうなどの影響で大きく変わるため、毎年満開になるとは限らないとのこと。それでも移植を受けて今もなお力強く花を咲かせる姿は訪れる人に多くの感銘を与えることでしょう。
他の桜にはない歴史を持つ荘川桜をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか? 荘川桜から世界文化遺産である白川郷や五箇山へは国道156号線1本で行けますし、近くには荘川さくらの里など美しい風景も点在していますので、ぜひ荘川桜へ会いに出かけてみて下さい。
荘川桜へのアプローチ
地図:Yahoo! 地図情報アクセス:
■鉄道
・JR東海 特急「ワイドビューひだ」で高山線 高山駅へ。
荘川桜、御母衣ダム周辺には路線バスが運行されていないため、高山駅からレンタカーを借りるか、タクシー利用となります。
■車の場合
東海北陸自動車道 荘川インターチェンジから、国道158号線経由で国道156号線に入り、白川郷方面に向かう。
荘川桜のそばにも駐車場はありますが、混雑期はドライブインみぼろ湖に駐車して15分程度歩く必要があります。
【関連サイト】
- 荘川桜(J-Power/電源開発)
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