石川県立美術館で触れる気迫の美
石川県は江戸時代から文化政策面に力が入れられ、明治以降も行政がバックアップし、戦後にはいち早く芸術活動を始めたりなど、美術が盛んな地域です。また空襲にあわなかった事も幸いし、貴重な美術品が消失せず残りました。日本の美と技を結集した作品と出会える石川県立美術館を紹介します。300年以上の時を超え結ばれた奇跡のビッグカップルに出会える場所
存在感のある雌雄の雉の香炉。こちらは江戸時代の京焼の祖といわれている野々村仁清(ののむらにんせい)の手によるもので、手前が国宝の色絵雉香炉、左奥が重要文化財の色絵雌雉香炉です。
国宝 色絵雉香炉はもともと加賀藩の藩主・前田家が所蔵していたもので、家臣や町人の手を経て、1958年(昭和33年)石川県に寄贈されました。以来、石川県立美術館の顔として大切にされてきたのですが、その30数年余り後、ここに展示されていることを知った一般の人から、「持っている雌の雉香炉を一緒に展示してほしい」という申し入れがあり寄贈されました。こうして雌雄つがいで展示されることになったのです。
実に、江戸、明治、大正、昭和と4つの時代を超えて300年以上の時を超えてめぐりあえた奇跡のビッグカップルなのです。その縁の妙、深さに思いが飛びます。
石川県立美術館ではこの雉香炉を含め国宝1点、重要文化財6点をはじめ、石川県の歴史、美術工芸の伝統をふまえた、地域文化に関わりあるのある作品を中心に収蔵、収集しています。
また石川県と言えば九谷焼が有名ですが、ここでは古九谷のコレクションも充実しています。古九谷は、九谷焼の中でも最も早い江戸前期に焼かれたもので、作られたのはおよそ50年という短い期間だったと考えられています。その豪放華麗な意匠は、伊万里焼、京焼とともに日本の三大色絵として知られ、世界的にも高く評価されています。
美術王国石川県には重要無形文化財保持者・通称人間国宝に指定された作家が他の地域よりも多く、こうした人間国宝の手による伝統工芸作品も見逃せません。
伝統という重みに裏打ちされたゆるがない技術と、作家の感性が生み出した、日本の最高峰の美ともいえる作品には、とてつもない存在感があり、美しさの中にも緊張感ある迫力が伝わってきます。まさに「本物の美」と出会える空間です。
■石川県立美術館
住所:金沢市出羽町2-1
TEL:076-231-7580
観覧料(コレクション展):350円
開館時間:10:00~17:00 (季節によって異なる場合あり)
休館日:年末年始 展示替期間
アクセス:金沢駅から「兼六園シャトル」で約15分、成巽閣前下車徒歩約2分
金沢駅から「城下まち金沢周遊バス」で約20分広坂(石浦神社前)下車徒歩約5分(兼六園の金城霊澤付近から徒歩約1分)
地図:Yahoo!地図情報
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