もはやライバルは国産車
日本のマーケットにおいて、マニアックな“ガイシャ”イメージから最も遠い位置にあるフォルクスワーゲンブランド。長らくビートル、ゴルフといった“キラーコンテンツ”のみで勝負できたことが、輸入車ブランドのなかでも抜きん出て親しみ易い存在に仕立て上げた。それゆえ、もはやライバルは国産車であり、日本の根強い国産信仰を打破すべく、車種体系から価格設定、アフターサービスの体制まで、先頭を切って進化しなければならないブランドでもある。言ってみれば“特別なクルマ”からの脱皮こそが、日本におけるフォルクスワーゲンの未来を握っている。
3列7人乗りミニバンのシャラン。2010年に登場した現行モデルは1.4リッターTSIツインチャージャーエンジンと6速DSGを搭載。アイドリングストップ機構やエネルギー回生システムなども備え、環境性能を高めている
情熱と強い意志でエコカーもまた楽しい
フォルクスワーゲンは1937年に誕生した、実は比較的若い自動車会社である。フォルクスワーゲンというドイツ語自体が“国民のクルマ”という意味であり、それは即ち愛称“ビートル”で呼ばれたモデルそのもの、と言ってよかった。現在では、フォルクスワーゲングループの旗印のもと、フォルクスワーゲン、アウディ、セアト、シュコダ、ポルシェ、ベントレー、ランボルギーニ、ブガッティといった世界の有名ブランドが結集しており、これに提携関係にあるスズキも加わって、一躍、世界最大規模の自動車グループに成長した。それぞれのブランドがひと通りの成功を収めていることをみても、自動車製造に対するフォルクスワーゲングループの結束力や情熱の大きさを推し量ることができよう。
以前、フォルクスワーゲンの先行開発を担当するチームを取材する機会があった。例に漏れず、彼らもまたエコカー最前線で戦っていたが、そこには自動車に対する盲目的な愛情もあって、クルマは単なる移動手段では決してないという強い意志を感じたものだった。
だから、エコカーも楽しい。そして、その後マーケットに投入された幾つかの技術、例えばダウンサイジングのツインチャージャーエンジンとDSGの組み合わせ、はクルマ好きを喜ばせる“エコ”となったのだと思う。