食と健康/食と健康の基礎知識

感性・表現力……食と人生を豊かにする「味覚教育」(2ページ目)

食育基本法が成立して以来、盛んな食育活動。今回は30年以上の実績があるフランスのメソッドを取り入れた「味覚教育」と、その成果についてご紹介します。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド


おいしさの共有が感謝や愛情に

大阪ガスundefined食育セミナー

大阪ガス株式会社主催 
第5回食育セミナー

佐藤教諭は、フランスで学んだメソッドを基に、日本で「味覚教育」を取り入れた家庭科を実践されていますが、大きく違う点は、「調理」というプログラムです。フランスでは一つの「体験」として扱われますが、日本では「体得」することが重視されています。

「ごはんとみそ汁」を作るプログラムでは、生米と炊きあがったごはんの香りを比較し、調理によって香りが生み出されることに気づきます。またみそ汁づくりではだし入りとだしなしの味の比較をするなど、様々なエクササイズを展開します。

イメージするものを言葉で表現させると、例えば「ぼこぼこ」という表現ひとつでも、ひらがなで書くのかカタカナなのかでイメージは異なりますし、あるいは「蜂の巣みたい」と表現することもあります。調理という経験を通じて、子どもたちはどんどん表現する言葉が増えていくそうです。

またこうした経験を通じて、
「家で調理をする機会が増えた」と答えた子どもが86%
「自分でごはんとみそ汁が作ることができる」と答えた子どもが100%
という結果が得られました。

さらに
「自分で作った料理はおいしい」
「家族が喜んでくれたことが嬉しい」
「食べ物への感謝の気持ちがわいてくる」
などという感想がでてきました。

人のために食事を作るということは、「おいしさを共有する」こと。それが、感謝や愛情という心を育むです。

迷い、考える時間がチカラを育てる

佐藤教諭が最後に述べられたのは、家庭科には「迷い」の時間が必要だということです。

例えば、「みそ汁でだしをとる煮干しはどこを使うのか」?

子どもたちは、煮干しのにおいを嗅いだり、ちょっと食べてみて、「はらわたが苦い」ということを知ります。そこから「苦いはらわたははずして使おう」と考えます。

この迷い、考える時間が大切で、自分で解決した時に大きな自信となるのです。

こうした実践例を中心としたお話を伺い、「味覚教育」が、これほどのびのびと子どもの能力を引き出し、未来の人生にまでつながる、大きな可能性を秘めているのだということがわかりました。

また佐藤教諭が仰る「迷い」の時間の大切さは、多忙に時間を過ごす私たちにとってたいへん意味深いお話だと思います。子どもにとっては、大切な学びのチャンスを、忙しさの中でついつい見逃しがちです。「迷い」の時間をもつことを、できるだけ意識をするだけで、日常の中でも子どもの能力を伸ばす環境は作ることができるのではないでしょうか。

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