ペインクリニックとは
ペインクリニックは、神経ブロックから薬治療、リハビリ、心理療法まで、患者さんの痛みに合わせて、様々な角度から治療します
外科は主に手術、内科は主に薬で治療しますが、ペインクリニックは主に「神経ブロック治療」で痛みの緩和治療を行います。この他にも、漢方を含めた内服治療、リハビリ理学療法、鍼から心理療法まで、痛みに有効な治療方法を組み合わせ、総合的に痛み診断と治療を行うクリニックなのです。
ペインクリニックで治療できる症状・病気
ペインクリニックで治療できる病気は、発症から1ヶ月以内の急性痛はもちろん、半年以上続く慢性痛まで、頭の先から足の先まで、痛みを伴う病気すべてです。痛みに関わる症状であれば、頭痛、肩こり、腰痛、五十肩、筋肉・関節痛、閉塞性動脈硬化症などの血流障害による痛み、糖尿病など代謝障害が原因で起こる痛み、三叉神経痛など神経が原因で起こる痛み、そして癌による痛みまで、幅広く扱います。厚生労働省の平成19年国民生活基礎調査「感じている自覚症状」では、男性は「腰痛」、女性は「肩こり」を一番多く訴えていることがわかりました。腰痛と肩こりは、ペインクリニックが最も得意とする病気。特に女性の自覚症状ベスト5である、肩こり、腰痛、手足の関節痛、頭痛、体のだるさは、全てペインクリニックでの治療対象です。すなわち、ペインクリニックを受診すべき患者さんの数は、潜在的には日本で最も多いと言えます。
日本人が訴えた症状 TOP5
私が治療を行っているペインクリニックでも、初めて受診される患者さんから、こんな声をよく聞きます。
「エックス線を撮っても異状がなかったので、痛み止め(消炎鎮痛剤)とシップをもらって、電気治療とけん引治療を受けてきましたが、痛みが取れなくて……。」
「マッサージや鍼に行きましたが、スッキリ治りません。」
「仕事が忙しくて、毎日リハビリに通えません。」
「医者に訴えたけど、年齢だから仕方ない、と言われて辛くなった。」
確かに、軽い腰痛や肩こりなら、鎮痛剤やシップ、リハビリなどの理学療法が有効でしょう。しかし、慢性化した腰痛や、痛くてぐっすり眠れない肩こりなら、治療方針の再考や痛みの専門治療が必要です。徐々に痛み止めを飲む、シップを貼る以外の治療方法があることが認知されれば、この調査結果にも変化が現れるかもしれません。
日本では、病気とは普遍性、再現性、客観性が要求され、「痛いのなら、必ずその原因となる器質的疾患や組織障害が存在する」という考えに基づき、診断と治療が長期間行われてきました。その結果、心因性や主観に基づく「痛み」を病気と捉える土壌は、未だ不十分です。検査で体に異常がないから治療方法がない、ということではありません。「体」と「心」を切り離すことなく、全人的に痛みを捉え治療することが求められています。
ペインクリニックの治療方法
ペインクリニックでは、色々な治療方法を組み合わせ、総合的に痛みの治療を行います。ペインクリニックが行う痛みの治療方法
- 神経興奮の伝導を遮断する神経ブロック療法
- 痛み続ける神経の興奮を抑える内服治療
- 痛みの部位に刺激を与える刺激鎮痛法
- 鍼灸治療
- リハビリ・運動・理学療法
- 心理療法
- 手術療法
ペインクリニック治療の流れ
ペインククリニックでは、痛みの診断と治療を行います。痛みの診断は、まず問診、血液検査、レントゲンX線検査、CT・MRI検査などを行います。特に、ペインクリニックでは問診が重要。痛みは外から見ただけではわかりません。患者さんの訴えが最大の情報源となります。ペインクリニックを受診する場合には、以下のことをぜひ伝えましょう。
- いつから、どんなきっかけで、どこが、どのくらい痛いのか?
- どんな痛みを感じるのか?
締め付けられるような、ピリピリする、重くて鈍い痛み、など
- 持続的な痛みか、突発的に起こる痛みか?
- 安静時にも痛いのか、睡眠中も痛いのか、動くと痛みは変わるのか?
- どんな治療方法を受けてきたのか?
- 効いた治療方法はあるのか?
- 治療方針の希望
ブロック注射は怖いので受けたくない、
リスクがあっても本当に効く治療方法を探している、など
痛み治療は、継続的に心のケアまで見据えた取り組みが必要です。患者さんが納得し、満足が得られる痛み治療が受けられるよう、ペインクリニックはあらゆる工夫をこらします。ぜひ悩みがあれば気軽に相談し、疑問があれば率直に医師に質問してください。なぜなら、良好なコミュニケーション関係を構築することで、痛みの治療成績は向上するからです。
ペインクリニックが必要な理由
ペインクリニックを訪れる患者さんは、激痛や長期化した痛みに耐えています。治療を受けてもなかなか治らない痛みに焦りや不満、そして不安を感じ、持続的に緊張し、自律神経に影響を及ぼす方もいます。外からは見えない痛みを周りに理解してもらえない心理的要因や、仕事・ストレスなどの社会的要因も痛みに影響し、不眠症やうつ病を併発することもしばしば。なぜなら、痛みは「心」と「体」が深く絡み合った症状だからです。痛み止めの内服治療だけを継続しても、良好な結果につながらない理由もお分かりいただけると思います。痛みの治療をする場合、痛みを発信する神経や痛みを感じる脳を、切り取ってしまうことが出来れば、そんな簡単な話はありません。神経や脳を取り除くことなく痛み治療を行うので、ペインクリニックでは多角的かつ継続的に痛み治療を行います。それでも残念ながら、ペインクリニックなら痛みが100%絶対に治る、とは言い切れないのが現実。しかし、ペインクリニックは痛みで苦しんできた患者さんが、普通の生活が普通に送れるよう最大限の治療を行います。痛みに耐えて暮らす患者さんにとって、「痛みのために何もできない」から「痛みがあっても、〇〇ができるようになってきた」という喜びは、何物にも代えがたい感動です。痛みで悩む患者さん一人一人に、前向きに人生を生きる応援をする病院が、ペインクリニックなのです。