飛行機のエンジン屋が出自
会社名とエンブレムがBMWの歴史の全てを物語っている。バイエルン・モトーレン・ヴェルケ(バイエルン・エンジン・製造)の頭文字をとってBMW。20世紀前半の設立だから、そのエンジンといえば当然、飛行機用を指した。よく知られているように、エンブレムの十字はプロペラを模したものだし、白と青の格子模様はバイエルン州旗(さらには王家)に由来するものだ。戦争を経て、飛行機ビジネスが禁じられ、バイクや自動車にそのベクトルを転じた事情は、太平洋戦争後の日本の自動車メーカーとよく似ている。
一番の魅力は“エンジンの気持ち良さ”
そういう出自を持つブランドなので、現在に至るまで、製品の魅力はといえばまず、“エンジンの気持ち良さ”を挙げることができた。社名に“エンジン製造”と謳っているのだから、最も力が入っていて当然だろう。そして、つぎにはシャシーのデキの良さ。つまりは動力性能とハンドリングのレベルが高い=スポーティなブランドというイメージが醸造され、現在に至っている。フロントエンジン・リアドライブが中心だから、パッケージそのものはメルセデス・ベンツと同じながら、そのキャラクターは正反対と言っていい。そんなBMWブランドのイメージは、世界中どこでもおそらく同じものだろう。アウトバーンを走っていても、昔からよく“飛ばしている”のはポルシェかBMWというぐらいだし、エンジンフィールやサウンド、シャープなハンドリングなど、実際、ドライバーを盛り上げる演出や性能にも事欠かない。
クルマ好きのココロを捉えて離さない
日本でも、ドイツプレミアムブランドの代表格として、ベンツやアウディとは全く異なる、独特な存在感を放っている。若い世代からリタイア世代まで幅広く支持されているのが特徴で、そこには自動車におけるスポーツイメージの見事な昇華をみることができるだろう。“乗って単純に楽しい”という最も根源的な自動車の趣味性が、平凡なサルーンモデルにも体現されているというのだから、クルマ好きのココロを捉えないはずがない。BMWに乗るということは、気分的に"若い"ということかも知れない。エンジンを味わい、シャープなハンドリングを好み、ドライビングそのものを楽しむ、という運転に前向きな気持ちのある方が乗るべきクルマだ。逆に“クルマの運転なんて面倒なだけ”という方は、いくらBMWに憧れていたとしても乗らない方が幸せ。何せすべてのBMW車は、“アクセルを踏み込め、ハンドルを回せ”と、乗り手を挑発してやまない。セダンであろうが、SUVであろうが……。ミニバンが未だラインナップされていない理由も、自ずと理解できるというものだろう。