被災者の方をはじめ、多くの方に知っておいてほしいこと

救急

大震災後の避難生活中にも増える救急搬送。避難生活を送られている方々の健康状態も心配です

日本の地震史上最大規模となってしまったあの東北関東大震災や、最近の熊本地震でも大きな被害が出ています。被災者の方々が1人でも多く救出され早期に立ち直られることを祈らずにはおれません。これまでの経験の中で、地震のあと避難所やクルマの中などでの生活で体調を崩し健康を害される方が多いため、この記事をお書きしました。

ここではその代表格のひとつである肺塞栓症という病気を解説します。なお被災者の方々にはお怪我をされた方はもちろん、高血圧、心臓、肺、腎臓はじめ内蔵の病気をもっておられる方も早めに医師に相談されることをお勧めします。今回震災にあわなかった地域の方も、ぜひ知っておいてください。

肺塞栓症とは、血液が固まって血栓となりそれが肺動脈を詰まらせてしまう病気です。肺動脈が詰まってしまうと心臓が全身に血液を送れなくなり、まもなく心停止となって死に至る怖い病気です。肺は肺動脈と気管支動脈のダブルの血液供給があるため、肺塞栓症を起こした患者さんの約10%で、肺梗塞と呼ばれる肺組織の壊死が起こります。とくに大きな血栓ができるとなかなか溶けず、肺に大きな損傷を起こします。そうなると十分な酸素が供給できず、また心臓に大きな負担がかかり、心停止などに至るわけです。

肺塞栓症の予防法は血液がよどまないよう2時間に1度程度は動くこと。被災地でも可能であれば水分をしっかり取ることです。肥満、高齢、35歳以上で喫煙をしている経口避妊薬使用者などの条件があるとリスクが高まります。自分がどの程度リスクが高いかをあらかじめ知っておくことも大切です。以下で詳しく解説します。

肺塞栓症の原因

■下肢などの血栓
塞栓が一番の原因はこれです。深部静脈血栓症の患者の50%に肺塞栓症が合併し、肺塞栓症の患者の70%に深部静脈血栓症が合併しており両者は一連の疾患(静脈血栓塞栓症)と考えられます。

座位

座る姿勢を長時間続けると、下肢の静脈の中に血栓ができやすくなります。クルマの中での生活は危険ですので注意が必要です。

長時間同じ姿勢のままでいて、脚の静脈の流れが悪くなり、脚や骨盤の静脈内で血栓ができ、それが肺に流れ着く場合によく起こります。今回のような地震のあとクルマの中で生活している方(つまり下肢が頭や胴体より低い位置にあり下肢の静脈がうっ滞する)や、長期間寝たきりの人や、飛行機に乗っている(いわゆるエコノミー症候群)など長時間動かずに座っている人は特に危険性が高くなります。そうした人が再び動きはじめると、血栓は血管壁からはがれます。はがれた血栓は通常、流れに乗って肺まで運ばれ、そこで細い血管に詰まってしまうのです。

■骨折
肺塞栓は、骨折したときに骨髄から血液中に入った脂肪によっても起こります。地震の際に骨折された方は一層注意し、早めに医師に相談してください。

■出産
出産時に羊水が骨盤の静脈内へ入 り、塞栓を形成することもあります。比較的まれですが。

■がん
癌(がん)組織の一部がはがれて血流に入り、塞栓を形成することもあります。

■静脈注射での空気
薬剤や輸液などを静脈注射する際、大量の空気が入った後で血液が流れにくくなり、肺塞栓症を起こします。また、スキューバダイビングで、潜る深さや水面へ浮き上がる速さによって、空気塞栓症を起こすことがあります。

血栓ができやすい条件

クルマ

クルマの中での生活はプライバシーは守れますが、下肢が下になりやすく、うっ血して腫れやすく、血栓ができやすい危険な状態です

以下の状態のときに血栓ができやすいため注意が必要です。
  • 長期間の安静や動かない状態(クルマや飛行機の中で長時間座ったままでいるなど)
  • 高齢者
  • 凝固能が亢進した患者さん
  • 血液凝固異常を起こす疾患: アンチトロンビンIII欠損症、プロテインC欠損症、プロテインS欠損症、抗リン脂質抗体症候群、抗カルジオリピン抗体等
  • 心臓発作
  • 心不全
  • 不整脈(心房細動)
  • 下肢深部静脈炎
  • 外科の大きな手術
飛行機

飛行機で座席に長時間じっとしていると下肢静脈に血栓ができやすいため要注意です

  • 肥満
  • 麻痺のある方
  • 骨盤、股関節、脚の骨折
  • 過去の血栓の形成歴があるとき
  • 妊娠分娩や経口避妊薬(ピル)の常用
  • 脳卒中
  • 特に35歳以上の喫煙者による経口避妊薬の使用
次のページで肺塞栓症の症状・検査法・治療法を解説します。