心臓・血管・血液の病気/大動脈の病気・大動脈瘤・大動脈解離

大動脈瘤(真性瘤)の治療・手術・ステントグラフ治療

大動脈瘤(真性瘤)は、破裂するとあっという間に命を落とす危険な病気。胸部大動脈瘤でも腹部大動脈瘤でも注意が必要です。近年は破裂するまでに手術や治療をすれば救命できることが多くなりました。大動脈瘤の治療法、手術法、また近年進歩しつつある患者さんにやさしいステントグラフト(別名EVAR、TEVAR)治療についてご説明します。

米田 正始

執筆者:米田 正始

心臓血管外科専門医 / 心臓病ガイド

大動脈瘤の治療の概要

1. 内科治療
血圧

血圧を高くしないことは瘤の拡大を防ぐ有力な方法です

瘤が小さい間はまず血圧のコントロールや禁煙から始まります。かかりつけの医師か専門医の診察を受け、適切な降圧剤を継続して内服することが大切です。さらに、ストレスや便秘を避け、塩分の少ない食事や運動を心がけてください。塩分については担当医の先生のご指導のもと、栄養士さんに教えて頂くのが役立つでしょう。患者さんのお好きなメニューの中での減塩を図ろうというわけです。

これらの治療では動脈瘤を小さくすることはできないため、根本治療ではありません。瘤が大きくなるのをできるだけ抑え、遅らせることを主眼とします。

大動脈瘤がある部位に痛みや違和感がある場合は、急いで専門医を受診する必要があります。激痛の場合は破裂の可能性があるので、直ちに救急車を呼んでください。

2. 外科治療
■ 外科治療が適応になる基準
サイズ

大動脈はあるサイズを超えると急に破裂しやすくなります

瘤の直径が、胸部大動脈瘤で55~60mm、腹部大動脈瘤で45~50mmを超えた場合、手術適応と考えられています。

手術の「適応」とは手術するほうが手術しないよりも患者さんにメリットがあるという意味です。つまり手術が勧められるという意味です。

マルファン症候群などの結合組織疾患の患者さんはそれより少し早いつまり瘤が小さいうちに手術を受けることが安全上勧められます。大動脈弁が二尖弁の方の上行大動脈や大動脈基部の拡張の場合も同様です。

また、紡錘状瘤よりも嚢状瘤のほうが破裂の危険性が高く、早期の手術適応があるといえます。というのはいったん大動脈瘤が破裂すると、命の危険があるからです。

■ 大動脈瘤の手術
手術にさいしては、大動脈瘤の部位に応じてその瘤の部分に到達するための様々な切開の仕方(胸骨正中切開、左開胸、開腹など)があります。瘤を合成繊維などでできた人工血管で置き換えます。

胸部大動脈瘤の場合は、人工心肺によって体外循環させながら、瘤の部分をポリエステル繊維(ダクロン)等でできた人工血管で置き換えます。腹部大動脈瘤の場合、体外循環は必要としません。大動脈瘤壁は切除せず、後で人工血管を覆うために使用します。

次ページでは、腹部大動脈瘤、胸部大動脈などの部位別に手術法を解説します。

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