大動脈瘤の治療の概要
1. 内科治療血圧を高くしないことは瘤の拡大を防ぐ有力な方法です
これらの治療では動脈瘤を小さくすることはできないため、根本治療ではありません。瘤が大きくなるのをできるだけ抑え、遅らせることを主眼とします。
大動脈瘤がある部位に痛みや違和感がある場合は、急いで専門医を受診する必要があります。激痛の場合は破裂の可能性があるので、直ちに救急車を呼んでください。
2. 外科治療
■ 外科治療が適応になる基準
大動脈はあるサイズを超えると急に破裂しやすくなります
手術の「適応」とは手術するほうが手術しないよりも患者さんにメリットがあるという意味です。つまり手術が勧められるという意味です。
マルファン症候群などの結合組織疾患の患者さんはそれより少し早いつまり瘤が小さいうちに手術を受けることが安全上勧められます。大動脈弁が二尖弁の方の上行大動脈や大動脈基部の拡張の場合も同様です。
また、紡錘状瘤よりも嚢状瘤のほうが破裂の危険性が高く、早期の手術適応があるといえます。というのはいったん大動脈瘤が破裂すると、命の危険があるからです。
■ 大動脈瘤の手術
手術にさいしては、大動脈瘤の部位に応じてその瘤の部分に到達するための様々な切開の仕方(胸骨正中切開、左開胸、開腹など)があります。瘤を合成繊維などでできた人工血管で置き換えます。
胸部大動脈瘤の場合は、人工心肺によって体外循環させながら、瘤の部分をポリエステル繊維(ダクロン)等でできた人工血管で置き換えます。腹部大動脈瘤の場合、体外循環は必要としません。大動脈瘤壁は切除せず、後で人工血管を覆うために使用します。
次ページでは、腹部大動脈瘤、胸部大動脈などの部位別に手術法を解説します。