さっさと一元化して公務員の本来の年金部分にメスを
会社員と公務員の年金一元化を急ぐべき理由は他にもあります。公務員には実は共済年金の上に職域加算と呼ばれる上積みの年金部分があります。これは会社員の企業年金に相当するものであって、必ずしも不当なものではありませんが、この部分の見直しが「簡単な一元化」の後にすぐ取り組むべき重要な課題として残っているからです。
企業年金が会社の負担になるように、公務員の退職金や職域年金は国や地方公共団体にとって大きな負担となっています。退職一時金を払うための債券を発行するところもあるくらいです。当然将来にツケを回していることになります。
私は公務員もこの上積み年金部分を401kにして自己責任にすればいいと思っています。国や地方公共団体の財政に追加負担を求めることもなくなりますし、国の栄枯が公務員の年金資産の増減とつながっているくらいが働きがいにもなるし、公務員の老後資産としては適当なあり方ではないでしょうか(投資信託で運用し、指図は月1回に押さえれば、インサイダーの問題も生じません)。
本格的年金一元化と総背番号制をどう考えるか
ところで、国民総背番号制のようなものが国民を管理するものだとして反対する人が多いのですが、国が国民をまったく管理しないでは社会は成立しません。むしろ管理できる範囲を明確にしたほうがいいと思います。国民年金の基礎年金番号も加入履歴の管理は重要な役割があったにもかかわらず、少し前まであいまいなままに運用していたため、消えた年金問題の温床になってしまいました。国民総背番号制もしっかり議論し、形をつくるべきです。税金や年金を始めとする社会保障の関係で状況を把握できないほうが不正につながりかねませんし、国民が損をする可能性もある、ということは覚えておいたほうがいいと思います。
しかし、これと年金一元化は無理にくっつけなくてもいいと思います。総背番号制を無理にひもつけなくても新しい年金制度はスタートできると思います。自営業者の健康保険料は確定申告にもとづく年収により計算され、役所の間でデータの受け渡しがあり、保険料を納めます。年金で同じことができないわけはありません。
もちろん、税務署の管理番号と基礎年金番号と住基ネットの番号が別であるよりは、総背番号制をしっかり定義し、これにもとづき運用するほうが効率的です。しかし、年金一元化議論の大前提が背番号制という発言は、検討を阻害する要因の大きいように思います。
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人によって思いは様々ですし、優先順位もあります。与謝野大臣にとっては年金一元化の仕組みより、消費税増税や総背番号制のほうが関心が高いのかもしれません。(直接聞けば、それはどれも重要だ、と言われそうですが)
ニュースは、発言者のポジションと報道者のポジションに注目し、異なる意見も加味してみるとより深みが増すと思います。