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あえてお笑いの立場から語る、つかこうへい論(3ページ目)

昨年7月、演劇界の巨星・つかこうへい氏が逝去されました。各界から多くの追悼の言葉が寄せられましたが、お笑いの世界に与えた影響については、ほとんど誰も語っていなかったように思います。ということで、半年遅れではありますが、追悼の意味を込めて、多少片寄りのある「つかこうへい論」を書きました。

広川 峯啓

執筆者:広川 峯啓

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つかこうへいと北野武

一方のツービートは、当初セントルイスの人気に準じていました。しかし、山形出身のビートきよしを、ビートたけしが大げさにツッコむネタが大受けし、漫才ブームのトップランナーとなります。

そこには「地方出身」という平凡さを笑うという意味で、つかイズムが受け継がれているものの、さらにそれをデフォルメして罵倒するワザが盛り込まれています(北野武自身の言葉によれば、B&Bの漫才を参考にしたとのこと)。

ただし、「山形」「老人」とともに毒舌の対象になっていた「ブス」いじめについては、つか芝居から直に持ってきたとしか思えません。ビートたけし人気が不動のものになるにつれて、ブスネタをやらなくなったのは、単に道徳上のことだけではないような気がします。

全ての笑いは、つかに通ず!?

漫才ブームに先駆けて脚光を浴び、今ではワン&オンリーの地位に君臨するタモリでさえも、つかこうへいの引力から逃れることはできませんでした。むしろ「凡庸なものを批判する」という思想を、いちばん色濃く継承しているのかもしれません。

また、コント赤信号やシティボーイズなど、演劇の世界から転進してきたコントグループは、もっと直接的かつ積極的につか芝居を継承し、できれば乗り越えようとしてきました。というか、80年代以降の演劇の笑いには、多かれ少なかれ、つかこうへい成分が含有されています。演劇界にとって、これは自明の理といっても過言ではないでしょう。

まさに「全ての道はローマに通ず」です。ただ、最後に付け加えておきたいのは、ここまでに挙げてきた芸人を、オリジナリティがないと貶めている訳では決してないということ。笑いに限らずすべての創作物は、それ以前の作品から影響を受けています。ただ、そのことを知らない人や、気付かないふりをしている人には、はっきり示す必要があると感じたので、あえて文章にした次第です。

ということで、年も改まりましたが、改めて、つかこうへい氏の功績をリスペクトしつつ、ここにご冥福をお祈りしたいと思います。
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