芥川賞受賞作
子供の頃を思い出す。新潮社刊。
著者の朝吹真理子さんには「日経ウーマン」4月号でインタビューした。小さいころ、将来なりたいものはと訊かれるのが一番怖かったという話が興味深かった。
『苦役列車』の主人公は、北町貫多、19歳。家族は離散し、友達も恋人もなく、安酒と風俗だけを楽しみにその日暮らしをしている。自分勝手で辛抱がまったくできず、おもねるような態度をとったかと思えば暴言を吐く。貫多は現実に近くにいたら非常につきあいづらい人。日雇い現場でようやく話をするようになった同い年の日下部にもだんだん相手にされなくなる。でも、なんだか愛嬌があって、憎めない。