プラドで押さえたい注目画家エル・グレコ
ギリシャのクレタ島出身のエル・グレコ。1560年ごろイタリアに渡り絵画を勉強した後、1567年ごろ当時スペイン内で宗教の中心地だったトレドへ。彼の作品の大半は宗教画で残りは肖像画だと言われています。プラドで見られるのは1580年ごろ描かれたという「胸に手を置いた紳士」。襟と袖についたレースと手にした剣が只者でなさそうな雰囲気を醸し出している肖像画です。モデルは、アルカサス市長やモンテマヨール候だと言われています。懺悔や誓いを表した絵画だと言う説もあるそうですが、実際のところはいまなお不明だそう。
もう一点は宗教画の「三位一体」。トレドのサント・ドミンゴ・デ・シロス教会で1577年から1580年にかけて創作された、イエス・キリストが天に昇っていく様子を描いた幻想的な作品です。イタリアの画家ミケランジェロに影響を受けた絵画だそう。
その他の見落とせない作品
その他見逃せない作品は、ホセ・デ・リベラの「ヤコブの夢」。スペイン人でありながらスペイン(アラゴン王国)の支配地だったイタリアのナポリで暮らしたリベラの作品は、16世紀末から17世紀前半にイタリアに発祥したバロック様式(古典主義)の画風で有名。「ヤコブの夢」は、木にもたれて居眠りするヤコブとその背後の空に繋がる天使の道筋の光と影のギャップが素晴らしい。ベラスケス以前に活躍した、スペインアートに多大な影響を与えたと言われるバルトロメ・エステバン・ムリージョの作品も押さえておきたいところ。愛らしく優しい画風と家族や人間性を表した作品が多いのが特徴。なかでも「良き羊飼い」は、そんな彼の作風を大いに表した、優しい表情の羊と子供の絵画です。
また、スペインの芸術を語るのに避けて通れないイタリアの名匠たちの作品もプラドの見所です。例えば1450年から1527年のイタリアルネサンス最盛期に活躍したラファエル・サンティ・デ・ウルビノの「枢機卿」、ルネサンス期にベネチアで活躍したヴェネツィア派と呼ばれるティツィアーノ・ヴェチェッリオの「馬に乗ったカルロス5世」、バロック様式の巨匠カラバッジョの「ダビデとゴリアテ」など。
フランドル派の絵画では、エル・ボスコ(ボス・ヒエロニムス)の3連の祭壇画「快楽の園」、神話に登場する3人の乙女を描いたピーター・パウル・ルーベンスの「三神美」に注目を。
プラド美術館の回り方
作品一点一点を美術館の隅から隅まで丁寧に見るとなると、1日では足りないことになってしまいます。そこで、後で「あれ見たっけ……」ということがないよう美術館の入り口で無料のパンフレットやガイドブックを取得し、お目当ての絵画の場所をチェックしてから、館内で指示される方向に沿って見て行きましょう。公式サイトから館内マップもダウンロードできるので、事前に計画を立てておくのもおすすめ。<DATA>
■Museo del Prado(プラド美術館)
住所:Paseo del Prado s/n(Googleマップ)
TEL:(34) 91 330 2800
開館時間:10:00~20:00(1月6日、12月24、31日は~14:00)
閉館日:1月1日、5月1日、12月25日
見学料金:15 ユーロ(月~土曜18:00~20:00、日曜、祝日17:00~19:00は無料)
最寄り駅:地下鉄2号線Banco de España または1号線Atocha 徒歩7分