手術による花粉症治療の効果・副作用
病院で行う花粉症の治療は薬物療法だけではありません
花粉症になると「下鼻甲介(下図)」が腫れてしまいます。花粉症の症状が繰り返し起こり、鼻の粘膜が元に戻らないくらい腫れてしまったり、薬を使っても症状が改善しなくなってしまった場合、以下に説明する手術治療を検討することができるのです。
青く囲った所が下鼻甲介です
- 日帰り手術
- 1週間程度の入院手術
手術の効果は
- 数年ほど効果が持続する
- 薬を内服する必要がなくなるか、または少なくなる
近年増えてきたレーザー治療は、外来でも手軽に受けられるというメリットがあります。しかし手術である以上、「侵襲性(しんしゅうせい)」という身体を傷つける治療法であることには変わりありません。鼻の嗅覚や通気性などの機能を損なわないように十分注意する必要があります。
また、レーザー治療は症状の再発や効果の持続性などの問題もあります。花粉症の症状自体は一回きりのものではなく、毎年同じシーズンに繰り返されることがほとんどですので、よく耳鼻科で相談しましょう。費用については、薬や検査などを含めるとより多くなりますし、その後の受診によっても1年でかかる費用は変わってきますので、あくまで参考までに
手術による花粉症治療の種類
花粉症の鼻づまりは、鼻の中の「下鼻甲介」が腫れることで起こります。■鼻づまりがひどく薬で良くならない場合
- レーザーによる下鼻甲介粘膜切除術
- 超音波メス凝固による下鼻甲介粘膜切除術
- 炭酸ガスレーザー、アルゴンプラズマ凝固装置による下鼻甲介粘膜蒸散術
- 80%トリクロール酢酸塗布による下鼻甲介化学剤手術
- 粘膜下下鼻甲介骨切除術
- 鼻中隔矯正術
- 鼻茸切除術
- Vidian神経切断術
- 後鼻神経切断術
鼻の粘膜の腫れを減らすための治療
■ レーザーによる下鼻甲介粘膜切除術局所麻酔をして、YAGレーザーやKTPレーザーを下鼻甲介粘膜を切除します。切除の範囲や深さによって様々な方法があります。鼻づまりへの効果が期待できます。副作用としては、吸気での加温、加湿する鼻の機能が失われます。
KTPレーザーによる術後2ヶ月ので効果では、くしゃみ74%、鼻水82%、鼻づまり96%と報告されています(中之坊先生の報告)。ただし、術後にレーザーでの傷が治まるには8~10週間かかります。
費用:保険診療の3割負担で片方約5000円、両方で約10000円。
■ 超音波メス凝固による下鼻甲介粘膜切除術
局所麻酔をして、超音波によって刃の先端を振動させて温度を上げ、出血を少なく、下鼻甲介粘膜を切除します。レーザーと同様の効果が得られ、副作用も同様です。
費用:保険診療の3割負担で片方約5000円、両方で約10000円。
■ 炭酸ガスレーザー、アルゴンプラズマ凝固装置による下鼻甲介粘膜蒸散術
局所麻酔をして、下鼻甲介粘膜の表面をレーザーで焼いて削っていく方法です。週1回で3~5週間照射します。出血の心配はありません。
術後1ヶ月での効果では、くしゃみ77%、鼻水75%、鼻づまり72%と報告されています(川村先生の報告)。表面だけを処理するので、レーザーによる下鼻甲介粘膜切除術よりは鼻づまりへの効果がおちます。
費用:保険診療の3割負担で片方約5000円、両方で約10000円。
■ 80%トリクロール酢酸塗布による下鼻甲介化学剤手術
局所麻酔をして、80%トリクロール酢酸を綿棒で、2度に分けて下甲介に塗布します。通年性アレルギー性鼻炎での治療後3年以上たってからの効果はくしゃみ約60%、鼻水約50%、鼻づまり72.5%と報告されています(八尾先生の報告)。一時的に鼻がヒリヒリします。
費用:保険診療の3割負担で約3000円。
鼻の通気性を改善を目的とした鼻腔整復術
■ 粘膜下下鼻甲介骨切除術粘膜の下にある下鼻甲介骨を取り出して除去する方法。骨だけでなく、粘膜についてもレーザーや切開したりして、粘膜の量を減らします。
術後1年での効果では、くしゃみ81%、鼻水72%、鼻づまり100%と報告されています(森先生の報告)。
費用:保険診療の3割負担で約13000円。ただし入院で行う事が多く、他の鼻中隔矯正術、レーザーなどによる下鼻甲介粘膜切除術などを入れると25万程度
■ 鼻中隔矯正術
左右の鼻を隔てている鼻中隔を矯正する方法です。
費用:保険診療の3割負担で約16000円
■ 鼻茸切除術
アスピリン喘息でよく合併する鼻のポリープを鼻茸と言います。花粉症や副鼻腔炎に合併します。特に、治りにくい喘息に鼻茸はよく合併します。鼻茸は切除しても再発を見られますが、ひどい場合は、嗅覚障害などを起こしますので、大きな場合や場所によっては早期に切除したほうがいいでしょう。内視鏡を使って、外来でも可能な場合もあります。
費用:保険診療の3割負担で約10000円
鼻水を抑えるための手術
■ Vidian神経切断術A:Vidian神経切断術 B:後神経切断術
術後6ヶ月での効果は85%と報告されている
副作用としては、涙の分泌が障害されドライアイになったり、口と鼻の間の口蓋の知覚麻痺、物が二重に見える複視などがあります。
ただし入院で行う事が多く、他の鼻中隔矯正術、レーザーなどによる下鼻甲介粘膜切除術などを入れると25万程度。
■ 後鼻神経切断術
Vidian神経切断術の改善した方法で、涙線につながる神経を温存できます。くしゃみにも効果があります。術後6ヶ月での効果は92%と報告されています。
副作用として歯のしびれがあります。ただし入院で行う事が多く、他の鼻中隔矯正術、レーザーなどによる下鼻甲介粘膜切除術などを入れると25万程度かかります。
レーザーなどの外科手術は日帰りの外来手術が可能ですが、骨を切除する手術、鼻中隔矯正術、神経切断術などは入院になることがあり、費用はどうしても多くなってしまいます。入院期間は施設によって異なりますが、1週間以内のことが多いです。
これらの手術は、通年性アレルギー性鼻炎に有効で、花粉症の場合は、飛散量が多いと効果が不十分なことがあります。その場合は、他の治療方法を併用することがあります。
外科手術については、効果と費用を考えて、行う方法と言えます。