6.利益と節税、内部留保との関係に注意

税理士として、多くの経営者に接し、もうひとつ感じること。節税に走りすぎて、内部留保がおろそかになりがちだということです。経営者が税金を払いたくないために、目一杯の節税をして利益をカツカツにしてしまうのです。利益が出ないということは、会社の内部留保(自己資本)も蓄積されないということ。しかし、基本的にはある程度の税金を支払わない限り、内部留保は増えていかないのです。利益がなく内部留保がない場合、一番困るのは必要なときに資金調達をしにくくなるということ。利益がなく内部留保がない状態というのは、金融機関からみて貸し出しをしにくい企業ということになります。

今後、新たな金融機関との取引を開始するには過去3期分の決算書の提出を求められます。もし、3年以内に新たな資金需要が出てくる可能性がある場合、決算である程度の利益を出せるように心がけてください。節税思考が強すぎるのも問題となります。ご注意ください。
 

7.無借金経営がいいとは限らない

無借金経営という響き、いいですよね。優良企業の代表のような印象を受けます。ただし、大企業などで潤沢に内部留保を蓄えた体力のある会社ならいいですが、中小企業にとっては、無借金経営は必ずしもいいこととは限りません。いくら無借金でも、手元キャッシュがなくなったら経営は危険状態に陥ることを認識してください。

昔から、金融機関は「晴れの日には傘を貸し、雨の日には傘を貸さない」といわれます。ガイドの経験上もそのように感じます。業績が良くてお金なんかとても必要なさそうな企業には、「どうぞ、うちの資金を使ってください」といい、逆に本当に今お金が必要な企業には、「少し検討させてください」などと答えるのが常です。金融機関からしたら、安全にお金を返してくれることが一番重要ですので、それも当然かもしれません。

企業側としては、これを逆手に取るしかありません。それほど必要がなくても、業績のよいときに運転資金を借りておくということも生き残りの手段として有効なのです。つまりムリして無借金経営をして後で業績が調子悪いときがあって困るくらいなら、最初から必要な資金を借入で手当てし手元に潤沢なキャッシュを蓄えておくということがオススメです。また、業績のよいときこそ銀行取引を広げておくいいチャンスです。業績のいいときほど、将来の資金需要の拡大に備え、新たな金融機関との取引を開始しておくのがコツといえます。

8.支払いサイト、入金サイトをよく検討する

資金繰りを考える際、支払、入金についての締め日、支払日、回収日などの設計にも注意を払うべきです。後になってから支払いサイト、入金サイトを変更するということは、やりにくいものです。その事業を始める際によく検討しておく必要があるでしょう。

例えば、売掛金の入金があってから給料を払うお金の流れになっていれば運転資金が少なくて済むはずです。また、売上金について前金で受け取れる部分がないか、手形やファクタリングの割合を下げるなど支払い条件について交渉の余地はないかなども検討すべきでしょう。もちろん初めから先方の支払条件に従うことになるケースも多いとは思います。しかし、交渉の余地があるのなら、交渉すべきです。その分、運転資金の借入枠を節約することにもつながります。

9.助成金は資金調達として期待できるとは限らない 

国の施策によって、返済不要な各種の助成金(厚生労働省系の助成金)がもらえるケースがあります。こうした助成金は資金調達の手段として期待できるのでしょうか。あまり期待できないというのが税理士であり社会保険労務士でもある私の答えです。その理由は3つあります。

1.助成金をもらうためには、
  • 助成金の存在を知っていること
  • 一定額以上の物を買ったり、一定条件の従業員(給料額、経験、置かれた状況など)を雇い入れたりといった厳しい条件をクリアすること
  • 決められたタイミング、手順に従って申請すること
社内の制度を厳格に整えること などが必要です。つまり、助成金を受け取るために、ある程度のコストが掛かるのです。

2.助成金が入金されるのは、アクションを起こしてから半年後から1年後になる。

3.審査があるため、絶対にもらえるというものはない。

このように助成金をもらうことも一筋縄ではいきません。国から返済不要のお金をもらえるのですから、もらいたいと思うのが人情ですが、ムリして条件を無理矢理クリアしてもらうのだけはやめてください。一度きりの支給である助成金をもらうために、経営そのものがゆがんでしまうこともあり得るからです。世の中には、大々的に宣伝して助成金を受けることを強く推奨する傾向もあります。そうしたことに流されず、冷静に判断して、もらえそうなら専門家(社会保険労務士)と一緒に検討を進めるというのが正しい受給の仕方です。

10.資金繰りもわかる税理士とつきあう

巷には「税理士に経理を任せると数字の把握がおろそかになるからそれは悪いことだ。そのために経理は全て自社でやらなければならない」という都市伝説のようなものがあります。このことを考察してみたいと思います。

経理と一言でいっても実は2種類があるということをまず認識してください。

1.財務会計
株主など外部の利害関係者に報告するために、複式簿記など定められたルールに従って過去の取引を帳簿に記帳し、財務諸表を作成していくことを目的としています。また、作成された財務諸表に基づいて法人税等の申告書を作成提出して納税することになります。基本的に一般的な税理士が携わるのはこちらについてです。

2.管理会計や資金繰り
一方、管理会計は経営者が経営についての判断・決断・行動する材料として利用する経営(未来)のための会計です。社内の資料ですから、特に決まった書式があるというわけはありません。また、資金繰りについても社長の頭の中にある未来の予測に基づくものですから、当然ながら社内で行っていくべきものです。

このように、経理といっても財務会計、管理会計と資金繰りは別物なのです。税理士にまかせたからといっても、管理会計や資金繰りは社内で行わなければならないことになります。

ただ、税理士選びにおいてベストなのは財務会計のみならず、管理会計や資金繰りについても相談に乗ってもらえる税理士を選ぶということです。税理士の中には、会社経営や一般の事業会社の財務部門などでの経験がなく、管理会計や資金繰り、資金調達についての知識や技能が不足している方もいらっしゃいます。顧問を依頼する前にそういったこともよく見極めてください。


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