土地活用のノウハウ/入居者ニーズとマーケティング

土地活用の新しいキーワード、それは「高齢者」(1)(2ページ目)

少子高齢化の時代では、賃貸住宅の主要顧客である若者層が大幅に減少してゆく一方で、総人口に占める高齢者の割合は、増加し続けていきます。65歳以上の高齢者人口が、現在では22%を超え、5人に1人が高齢者、10人に1人が75歳以上人口という「本格的な高齢社会」を迎えています。高齢者の方たちに住まいを提供することに積極的に取り組めば、時代の要請に対応した、とても有望な土地活用の一つとなります。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

ニーズの多様化で市場が変わりつつある 

長い人生

長い人生を楽しく豊かに過ごすには

高齢者向けの住宅環境は、様々な面で2極化しています。立地で言えば「都心型」と「郊外型」、費用で言えば、入所時にほとんど費用の掛からないものから、マンションを購入するのと同程度の費用が掛かる高級な施設まで、大きく分かれます。また月々の費用も、年金で対応できるようなものから高級マンションの賃料並みと分かれています。

先日、私が見学した神奈川の老人ホームは、非常に恵まれた環境で、設備も充実したものでした。広々したお洒落な専用居住スペースがあり、食事も一流ホテルのシェフと栄養士による心配りがされています。驚くほど美味しく、噛まないで食べられるステーキなども用意され、塩分を抑えながらもしっかりとした味付けで、毎回和洋を必ず選べるようになっておりました。

2極化してゆく住宅環境タイプ

高齢者向けの住宅環境

入居されていたオーナーさんも、食事が何よりも楽しみだとおっしゃっていました。またシアター、プール、ビリヤード場等の設備が充実しているうえ、入居されている人たちのためにいろんな趣味のサークルも整っていて、豊かな老後が期待できるものでした。まだまだお世話になる世代ではない私でも、本当にうらやましく、許されるなら今すぐにでも申し込みたいとまで感じました。

しかし入居費は、一人5000万円、月々25万円(食事代別)と高額で、資産のある限られた方たちのための施設となっております。

かたや、築40年を超えた老朽アパートに最低限の手を入れただけで、グループホームにした施設もあります。その施設は、非常にみすぼらしい外観でしたが、スタッフが温かく、心のこもった対応に感動したものです。入居一時金は、50万円ぐらいで、月々の利用料は6万円程度でした。

高齢者事業企画には、パートナー探しが重要です

これから、土地活用に社会貢献型の高齢者施設をお考えの方には、まず、この事業の企画に長けたパートナーを探すことが必要となってきます。

立地条件と、敷地の概要をぱっと見て、この土地はグループホームに向いている。この土地は大型介護施設には若干面積が足りないなど、業界知識と経験がある人のサポートが必ず必要となってきます。土地活用であっても、賃貸住宅とは全く違う業界です。まさに、飲食店を開業してみたいというくらいの異業種であると認識してください。共通しているところは、土地に建物を建てて、運営事業者が借り上げるという、建築行為と賃貸契約が伴う点です。

賃貸住宅   オーナーが建築
高齢者施設  Aメニュー:運営事業者が土地を借りて建築
          Bメニュー:オーナーが建築し運営事業者が建物を借りる
          Cメニュー:既存建物を改修し、運営事業者が建物を借りる

高齢者施設は、大きくAメニューと、Bメニューに分かれます。オーナーさんにとって、運営事業者はサブリース会社のようなものです。

しかし、運営事業者の選定を間違えると、経営が上手くいかずに滞納や倒産といったリスクが伴いますので、充分に注意が必要となります。

しかし、リスクをしっかりとコントロールできれば、事業は必ず成功し、長期に安定した運営事業者からの賃料収入が望めますので、皆様もアパート経営を考えているのでしたら、一度「この土地は、どうかな?」と、プランと収支を比較してみては如何でしょうか?

社会ニーズのある、人の役に立つ事業ですので、チャレンジしてみる価値は十分にあると思います。ただし、チャレンジする際に、ひとつお願いですが、「交通の不便な土地で、アパート経営には不向きなので、老人施設なんてどうだろうか…」といった安易な発想はやめましょう。

お年寄りだって、介護の必要性のない健康な方であれば、「都会で様々な人や文化に触れていたい」という希望をもっております。歩きまわれない人でも、子どもや孫が遊びに来やすいからと都心を希望する方が多くいらっしゃいます。

もし自分が入るとしたら、どんなところに入りたいか、を考えること。多様化するニーズを充分に考慮すること。「都心型」の施設は不足気味で、今後供給が増えると予想されますので、郊外型はこれから不利になる可能性のあることを、頭の片隅に置いておきましょう。

何よりも、高齢者・福祉に関する事業に取り組むには、明確なビジョンが必要となります。お金儲けではなく、今ある豊かさ、幸せを社会還元したいという気持ちがなければ成功しません。

そのために、志のあるしっかりとした考えを持った、企画パートナー・運営事業者との出会いがとても重要なポイントとなってきます。
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