犬の鳴き声から知る、犬の気持ち
犬の吠え声を日本語では「ワンワン」と表現しますが、英語では「バウワウ」、フランス語では「ウアウア」、ロシア語では「ガフガフ」など、お国や民族によって様々。しかし、聞こえ方はいろいろであっても吠え声・鳴き声の意味は共通です。犬の鳴き声の変化
鳴き声も成長していく
生後間もなく、クンクンと甘えるように何かを訴え、母犬を呼ぶような鳴き声を出しますが、ある観察によるとこれは生後7~9日齢でピークに達した後、生後4週齢頃には消えていくということです。
生後3週齢頃になると鳴き声も少し変化してきて、母犬から遠く離れたり、ケージに閉じ込められたりした時にはキャンキャン鳴くことがあります。この鳴き声は生後6~7週齢でピークに達し、以後だんだんと少なくなっていきます。
ワンワン吠えたり、ウ~と唸る声は生後3週齢頃から聞かれるようになり、生後9週齢頃にピークになった後、以降は終生使う鳴き声となります。人間の赤ちゃんがだんだんと言葉を覚えていくように、犬も少しずつ成犬の声・鳴き声となっていくのですね。
吠え声にも意味がある
犬の吠え声・吠え方には、いくつかのパターンがあります。決してこれらがすべてというわけではありません。状況や、その犬の個性によってはもっといろいろな鳴き方をすることでしょう。日頃の愛犬の鳴き声を観察してみてください。1:嬉しい時、興奮している時
「ワンワン、ワン、ワン」というように、見るからに楽しさや喜びを含んだ吠え声。顔の表情も穏やかで、体には緊張感がなく、シッポの位置はやや高めで、振る幅も広い傾向にあります。
遊びたくて吠えているような場合は、吠えられたからといってすぐにそれに応じたりしていると要求吠えの癖がつくことがあるので、吠えるのをやめたら遊んであげるなど対応の仕方にもちょっとばかり気配りを。
2:警戒している時
「ワン!」と一声、または「ワンワン!…ワンワン!」といった吠え方が多く、耳も立ち、体もやや緊張している感じです。来客時や見知らぬものに気づいた時など、家族である仲間に警戒することを呼びかけています。
吠え声の合間に相手の正体をもっと知ろうと、首を傾げて物音を聞こうとする素振りを見せたり、小さく「ウゥ…」と唸っていることもあります。相手の正体がだんだんとわかり、「これは要警戒」となると、吠え方が「ワンワンワンワン!」と連続的になることも。
教えてくれているのですから、反射的に「うるさい!」などと叱ったりせず、極力吠える原因(対象)を確認するようにして、「わかったよ、ありがとう」という意味を込め、適当なところで吠えるのをやめさせましょう。
3:怖い時
「ワゥ、ワンワンワン!」「ガゥガゥガゥ!」「ヒャンヒャン…」など連続的に吠えることが多いですが、体の位置や姿勢はおよび腰で、耳の位置は倒れ気味、シッポの位置も低めの傾向にあります。
声のトーンとしては上ずったとでも言いましょうか、少々高めに感じられ、時に吠えた後、後ずさりをしたり、逃げるような素振りを見せることもあります。怖さが増してくると、「ヒィ~ン…ヒィ~ン」というような鳴き声に変わることも。
4:相手を威嚇する時、攻撃態勢にある時
低く「ウゥゥゥゥ~~」と唸りながら、耳はピンと立ち、シッポも高い位置にあって、体全体が前方に向かっています。鼻には皺が寄り、背筋やシッポの毛は開立しています。優位にある犬が相手にその場から早く立ち去ることを望んでおり、立ち去らない場合、また相手の出方次第で攻撃に出ることがあります。
5:不安な時、寂しい時
「ク~ン…ク~ン…」「ヒュ~ン…」というような力ない小さな声。この鳴き声は子犬時代の名残とも言えます。その他、どこか痛みがある時にも聞かれます。
6:ストレスが原因で吠える時
何らかのストレスが原因となって吠え続けることがあります。「ワン…ワン…ワン…」と抑揚のない声で吠え続けたり、遠吠えになったり、もっと連続的に吠えることもあるかもしれません。
運動不足で吠えているなら、散歩の回数を増やしてあげるなど、ストレスが疑われる時は、再しつけと言うより、その原因を取り除いてあげることをまずは考えてください。
バセンジはまったく吠えないというわけではない
ここで特殊な犬種のお話を。バセンジはよく「吠えない犬」と称してペットショップなどで売られていることがありますが、まったく吠えないというわけではありません。確かに吠えにくくはあるのですが、一般的な犬種の吠え方とは少々違うということです。ヨーデルのような吠え声と言われるように、彼らなりの声の出し方で吠えているので、吠えないから無駄吠えのしつけもいらないだろうなどと安易に考えませんように。犬の吠え声は意外に響くもの、騒音対象にも
犬が吠えるのは意味があってのこと。しかし、周囲の迷惑にならない程度のしつけは忘れずに。
犬の吠え声というのは一緒に暮らす私たちからするとそれほど気にならないことのほうが多いものの、関係のない他者からすると迷惑な音にもなってしまうということについては気をつけたいところです。
ちなみに、犬の吠え声はどのくらいの大きさかというと、ある調査では以下のような結果になっています。
- アメリカン・コッカー・スパニエル 93dB
- ラブラドール・レトリーバー 92dB
- シェパード 91dB
- ゴールデン・レトリーバー 91dB
- ビーグル 89dB
- ミニチュア・ダックスフンド 89dB
- 柴犬 86dB
- シェットランド・シープドッグ 86dB
- ボーダー・コリー 84dB
- ポメラニアン 80dB
普通車(5m)が79dBとなっていますから、騒音レベルは車より高く、飛行機B747の86dBと同程度ということになります。また、テレビやプレス機などは同じような音が連続していますが、犬の吠え声は瞬間的にそれらの音圧レベルを超えることがあり、気になる人にはそれが余計耳障りに聞こえてしまうのかもしれません。
また、犬の吠え声に対して、加害感より被害感の方が大きいという調査結果もあり、つまりは、飼い主としてはもしかして近所に吠え声で迷惑をかけているのではないかという意識がやや低い傾向にあるということ。
吠え声がきっかけで裁判沙汰にまで発展したり、犬の命まで狙われたりといったケースも起こっています。犬の吠え声が原因でご近所同士のトラブルに発展してしまうこともあるので、吠えてもコマンドでやめさせられるように、そして必要以上には吠えないよう、しつけには気を配りたいものですね。
参考資料:
「心理と行動から見た 犬学入門」大野淳一著/誠文堂新光社
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