平成21年施行の地域商店活性化法が
商店街を動かし始めた
平成21年にオープンした世田谷区用賀のハロー用賀。近くにある駒澤大学を協力、街の活性化に取り組んでいる
ここのところ、商店街を歩いていると、空き店舗などを利用した休憩所、案内所といったスペースが目に付きます。どうやら、商店街に何か、動きが起きているらしいのですが、そこで思い当たるのが、国の施策です。経済産業省中小企業庁の推計によると、日本全国で約600万人もの人が日常の買い物や生活に必要なサービスを受けるのに困難を感じているといいます。首都圏に住んでいると、スーパーやコンビニエンスストアが身近にあり、そうした「買い物難民」の存在を意識することはあまりありませんが、今後、高齢化、人口減少、大型店の縮小・撤退、中心市街地の衰退が進めば、首都圏でも不便を感じる地域は出てくるかもしれません。
それを見越して、同省では平成21年度に「地域商店街活性化法」を施行しています。この法律、簡単に言えば商店街が元気になることが地域を活性化させ、住民の利便性向上に役立つ、その支援をしようじゃないかというもので、具体的には資金面、人材育成面でのバックアップを行っています。
台東区で発行している子育て世帯応援のすくすく手形が利用できる店の店頭。こうしたサービスには子育て世帯、地元商店街双方にメリットがあるという
また、これとリンクするのが厚生労働省の地域子育て支援拠点事業。商店街の空き店舗を利用して地域の子育てに寄与する施設を作れば、経済産業省だけでなく、厚生労働省からも補助が出るのです。これ以外でも各自治体で緊急経済対策として商店街の事業に助成をする動きもあり、やる気のある商店街はこうした複数の助成を利用して、生まれ変わろうとしているのです。
お休み処兼案内所では
配達、宅配サービスも
下高井戸商店街のしもたかステーション。トイレ、ベビーベットに休憩できるスペース、AEDなどが配されており、街の情報も掲出されている
では、具体的にどのような設備やサービスが登場しているのでしょう。いくつか例をご紹介しましょう。まずは、京王線・東急世田谷線下高井戸駅前にある、下高井戸商店街。この商店街では同法以前から商店街活性化に取り組んでおり、平成17年に商店街内に「しもたかステーション」なるお休み処兼案内所を開設、商店街情報や地域情報を配信したり、会議室のレンタル、無料法律相談などの各種事業を展開しています。トイレが借りられるのはもちろん、ちょっと休憩したり、子どものオムツを替えたり、授乳したりも可能で、私も実はしばしばトイレを拝借しています。
神奈川県の六角橋商店街では年末、宅配の無料サービスを行っていた。買い物の量が増える時期にはありがたいサービスだ
また、この商店街では買い物を自宅まで配達してくれるサービスや、買い物にいけない人に商店街の商品を電話、ファックスで注文、宅配するというサービスも行っており、実に親切。最近ではスーパーなどでも配達、宅配サービスは行っていますが、この商店街ならではの安さは他にないものだろうと思います。そして、この商店街の取り組みを見習ったかのような商店街も目につくところです。
宅配については最近、同種の事業を始める商店街が増えており、たとえば江戸川橋地蔵通り商店街では「お地蔵さんの横丁便」なる名称で購入額を問わず100円で宅配を行っていますし、白山上向丘商店街では購入者と一緒に荷物を運びつつ、会話をするという交流重視のシステムが好評とか。複数の商店街でNPO法人を作って運営をしようという商店街も出てきています。
地元の高齢者に人気、
商店街が行う便利屋さん
早くから独自の取り組みで知られる品川区、中延商店街。街を歩いてみると高齢者も多く、商店街のサービスが役に立っていることが実感できる
ちょっと面白い取り組みとしては品川区の中延商店街が行っている「街のお助け隊 コンセルジュ」なる有償ボランティアでしょうか。この商店街も早くから独自の取り組みを行っており、2005年以降「街のコンシェルジェ」として、いわゆる便利屋さん的なサービスを提供してきたのですが、2010年に改編され、再スタート。地元の高齢者に頼りにされています。
品川区にはがんばる商店街が多い。こちら、戸越銀座もそのひとつ
同じ品川区の戸越銀座銀六商店街では60歳以上の人向けにシルバーカードを発行しており、これがあると割引などのサービスが利用可。地域経済活性化の取り組みの一貫として、高齢者だけではなく、子育て世帯向けに割引、オマケ配布などのサービスを行う自治体、商店街も目につくようになっています。
神奈川県、衣笠商店街のおやこ休憩室。この商店街では他にもトイレを借りられる店舗に表示が出ていた
子ども向けにはオムツ換え、トイレ利用などができるスポットを設けたり、商店街内の店舗を利用できるようにしたりなどの例が多いのですが、中には湘南スターモール商店街(平塚市)のように、子育て支援施設を作る動きも。阿佐ヶ谷パールセンターのように、商店街(阿佐谷商店街振興組合)の会館を一般に開放、授乳などに利用できるようしているところもあります。また、バリアフリー化を進める商店街も少なくありません。
長く住むことを考えると、子どもにはもちろん、高齢者にも優しい街を選びたいものだ
商店街活性化に力を入れ始めた国、自治体の支援を上手に利用、再生を図る商店街であれば、きっと今後もがんばってくれるはず。これまで少数だったがんばる商店街に多くの商店街が続き、高齢になっても便利な生活が送れることを期待したいものです。