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よく目にする「完売」の2文字 ところが「契約済み」の意味ではない

「改悪」建築基準法による官製不況や都心ミニバブルの反動、さらにリーマンショックによる世界規模での金融不安によって、日本の分譲マンション市場は奈落の底へと突き落とされました。2009年、新設住宅着工戸数は1964年以来、45年ぶりに80万戸を割り込み(下図参照)、また、首都圏の新築マンション供給数は3万戸台へと激減するなど、この年は不名誉な記録をいくつも更新することとなりました。

ところが、それからわずか1年。後遺症は残りつつも市場のセンチメント(地合い)は大きく改善し、マーケットは底入れを実感できるほどに回復してきました。2010年9月、格付け会社のムーディーズが2008年以降、「ネガティブ」としていた日本の不動産業界に対する見通しを改め、向こう12~18カ月間の業界環境の方向性を「安定的」へと変更しました。日本経済が緩やかながら改善傾向にあり、不動産業向けの貸し出しも徐々に回復していることなどから、首都圏を中心に需要が改善し、不動産市況の悪化が続く可能性は低い —— と同社は分析しています。

新設住宅着工戸数の推移

 


さらに、12月の月例経済報告(内閣府)でも「住宅建設は持ち直している」との認識が示されました。先行きについては「各種の政策効果もあって底堅く推移することが期待される」と良好です。このところ景気が足踏み状態にある中にあって、政府も住宅建設の復調を公式に認めています。

それが証拠に、分譲マンションの「即日完売」があちこちで見られるようになりました。

  「お陰さまで第1期  即日完売いたしました」
  「多くのご支持を受け、全戸完売することができました」

と、各所で「完売」の2文字が踊ります。

完売とは、購入希望者による「買い登録」が全住戸に入っただけ

何とも華やかな光景ですが、実はこの「完売」という表現、私たちが日常で使う意味とは必ずしも一致していません。辞書を引くと「完売」=「売りつくすこと」とありますが、“青田売り”が主流の新築マンション販売において、建物すら出来上がっていないのに「売りつくす」ことは不可能です。

不動産売買でいう「完売」とは、対象住戸に購入希望者から「買いたい」という意思表示が入り、購入のための手続き(登録)が販売住戸すべてに入った状態をいいます。その時点では売買契約は成立しておらず、手付金の入金もなければ重要事項説明も済んでいません。われわれが日常会話で使用する「完売」=「売り切れ」とは、かなりかけ離れた意味で不動産取引では使われています。

そのため、抽選にはずれた人のところには必ずといっていいほど「キャンセル住戸が出ました」という連絡が入ります。購入意欲が薄れたお客さん(登録者)が辞退したことで「空き住戸」が発生したのです。登録後にキャンセルしても、その顧客にペナルティーが課されることはまずありません。何ら拘束力がない中での、表面上の「完売」というわけです。

これほど不確実性が高い状態で、「お陰さまで完売しました」と発表するデベロッパー側にも苦言を呈さざるを得ないでしょう。本当に売れ行きがいいのであれば、わざわざ「完売しました」などとアナウンスする必要はないはずです。「トリック」とも取れるような広告宣伝は自粛すべきです。誇大広告と誤認されないためにも、自制する姿勢を示してほしいと切に願います。


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