この経緯から、更新料の性質を考えると・・・?
こういった背景を踏まえると、更新料は賃料の一部、という性質を持っていると思われます。でも、それはあくまでも地価が上昇し続けていた、あるいは上昇見込みのあった時代の話。近年のように、不動産価格が上昇していくという予測が立ちにくい状況にあっては、更新料を賃料の一部と考えるのはどうか、という借主の主張もあります。
その一方で、もともと更新料は地価の高騰によって賃料増額するときに貸主と借主との間で合意が成立しなかった場合、訴訟や調停をしなければならず、それにかかる時間と費用の負担を軽減することをあらかじめ想定して、当事者間で一定額(つまり更新料)を支払うことによって解決しようとするものであり、賃料の一部と考えるのは当たり前、という貸主の主張もあります。
それぞれの主張に対し、平成22年10月29日、京都地裁では、以下のような見解によって更新料有効との判定が出された訴訟がありました。(詳しい記事はこちら→激化する更新料問題の行方)
更新料が始まった経緯を考えると、更新料は賃料の補充という性質を強く持っていたと言えます。でも、現在の不動産価格動向をみると、不動産価格が上昇する傾向はなく、特に短期間の賃貸借契約では、賃料の不足分が生じるとは考えにくいため、更新料を賃料の補充と考えるのは難しいでしょう。
そのほかに考えられる更新料の性質
その他にも更新料の性質として、「更新拒絶権の放棄」(=借主が更新料を払うことによって、貸主は正当事由の有無を検討することなく更新料を受領して賃貸借契約を更新するため、更新拒絶権の放棄への対価として考えられる)
「賃借権強化の対価」(=法廷更新による場合には、賃貸借契約が期間の定めのないものとなり、貸主は正当事由がある限りいつでも解約の申し入れをすることができるのに対し、借主は更新料を支払って合意により賃貸借契約を更新すれば、賃貸借契約の期間終了までは法廷更新に比べて賃借権が強化されており、更新料はその対価であると考えられる)
などの指摘があります。
でも、前述の事案ではいずれも更新料はまだ法的な性質は決まっておらず、賃貸借契約の期間が満了したときには、更新料は賃料に相当し、契約期間の途中で解約された場合には、既経過分については賃料になり未経過分については違約金と考えるのが相当であると京都裁判所は述べています。
近年の時勢を踏まえ、更新料そのものの存在の是非を問う動きが、数年前から賃貸業界で起こり、一部訴訟も起きています。現在でも訴訟は続いており、地方裁判所→高等裁判所→最高裁判所へと舞台を移動しながら、更新料についての議論が交わされています。
また、当初はこれまでに払ってあった更新料の返還を請求することが主な争点であったのに対し、最近では違った訴訟へと発展してきています。この動きを次回、見てみましょう。
激化する更新料問題・2010年の動向と今後の行方