ネパールの台所は神聖な場所

ワタシが各国の家庭を訪ね、料理を習い、口にしたなかで、もっとも色濃く印象に残った国はといえば、ネパールが筆頭にあげられる。なかでも、首都カトマンドゥの郊外であるティミという町に住むネワール族の家でのひとときは、鮮やかな彩りをもって記憶されている。

赤茶色の日干し煉瓦で造られた建物には、電気や水道はなく、夜はろうそくの灯りが頼り。食事など諸々の生活には井戸水や雨水が大活躍し、台所は赤茶色のつるりとした土床に覆われ、ひんやりと感じられる伝統的なつくりになっていた。台所には床からつながるように土のかまどがあり、そこではお母さんがしゃがみながらよく料理を作ってくれたものだ。

ネパールでは、台所は神聖な場所。台所はいつも清潔感に満ちあふれていた。食事はこの台所でハダシになり、しっかりとかためられた土床に直接座りながら食事を愉しむ。座っているだけで、すっ。自然と身体がニュートラルになっていった。そして、ステンレス製の皿に盛られた料理を手でよく混ぜながら口に運ぶと、土と一体になったかのような感覚を覚え、カラダじゅうに心地よさがかけめぐったものだ。

ネワール族の料理はバラエティーに富んでいる

ダル・バート

豆のスープ、ご飯、おかず、漬物がひと皿に盛られたネパールの国民食
「ダル・バート」

毎日の食事は素朴なものだったけれど、お母さんがかまどの火を調整しながら作る料理には、合理的な調理器具では得られない、おだやかで優しい、素直ともいえる味がした。毎食、心からおいしいと思い、ありがたみさえも感じられた。そんなステンレス製の皿に盛られたネパールの国民食である“ダル・バート”。これを何度口にしただろうか。

ハラルフードショップが目印

1階のハラルフードショップには、他では手に入りにくいネパール産のスパイス等が揃う。要チェック!

ネワール族ならではの食事にも出合うことができた(ネワール族は他の民族にはない洗練された料理をもつといわれています)。

黒い豆をもどしてすり潰し、鉄板で焼いた「バラ(ウォー)」、水牛などの肉をゆで、スパイスで和えた「チョエラ」、米を蒸してたたき乾燥させた「チウラ」、これに豆などの辛いおかずがひと皿に盛られた食事は、特に印象に残っている。

挙げた料理のなかには他の民族も食しているものがあるけれど、これらがセットになったものは、ネワールの家庭でしかワタシは味わうことができなかった。お母さんから作り方も教わったからなのかな。これらの料理に対する愛着心は育まれ、日本でも求め歩くようになった。

先日、そんなワタシの琴線にふれるネパール料理店に出合うことができた。新大久保駅から1分の場所に佇む、ネパール居酒屋と称する「モモ」である。ここには、ネパールでの生活を思い起こすような、実に高揚する料理が待ちかまえていた。