年金

老後の長生きリスク~公助・自助・共助で備えを(2ページ目)

老後のリスクは、現役世代のリスクと異なるところが増えるので、リスク対策も分けて考える必要があります。特に高齢化が進む現在では、長生きリスクへの備えが重要です。長生きリスクを公助・自助・共助の3点から効率よく準備するポイントをご案内します。

原 佳奈子

執筆者:原 佳奈子

年金入門ガイド

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老後のリスク~(3)病気・介護

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病気や介護の不安は年齢とともに高くなるでしょう

病気や介護への備えは、収入喪失と同様に、公助である健康保険や国民健康保険、介護保険で対処し、不足する分を共助である民間の医療保険や介護保険、預貯金などの自助で補うことがポイントでしょう。

年齢とともに病気や介護のリスクは高くなりますが、それに合わせて公助である健康保険や介護保険の保障が手厚くなる部分もあります。病気のリスクは、手術などの一時支出だけでなく、年齢とともに持病で長期間通院が必要になったり、複数の医療機関に通院することが必要になる場合があります。このため、70歳以上の人は外来(通院)診療で支払った医療費に対する高額療養費の計算方法が、70歳未満の人と異なります。1ヵ月間に支払った金額が以下の金額を超えた場合は、超えた分が高額療養費として還付されます。
高額療養費

 

70歳未満の人に比べると、自己負担の限度額が低く、また自己負担の全額を合算することができるので、高額療養費制度が利用しやすくなります。

公的な介護保険は、被保険者が65歳以上の第1号被保険者と40歳以上65歳未満の第2号被保険者にわかれています。第1号被保険者は介護が必要になった原因を問わず、要介護あるいは要支援状態に認定されたときに介護保険を利用することができますが、第2号被保険者は介護が必要になった原因が若年性認知症など加齢による疾病に限定されています。要介護状態あるいは要支援状態により利用限度額が異なりますが、原則1割の自己負担で介護を受けることができます。

ただし、一般的に介護は長期化する傾向があるので、1割の自己負担でも自助や共助で補う必要がでてきたり、介護保険の利用限度額以上に介護サービスを利用したい場合は全額を自己負担しなければなりません。共助である民間の介護保険や預貯金などの自助による備えが必要ですが、民間の介護保険は商品によって介護認定の基準が公的な介護保険と異なる場合があります。公的な介護保険よりも厳しい基準で介護認定される場合もあるので、加入時によく内容を確認しておきましょう。

病気や介護のリスクには、入院時や介護施設への入居時など一時支出も必要になります。入院時の自己負担費用は以下の通りで、平均すると約30万円を支出しています。
入院時の自己負担

(生命保険文化センター「平成19年度生活保障に関する調査」より)


自己負担費用の一部は高額療養費が適用されると還付されますが、入院には食事代の自己負担や差額ベッド代など高額療養費の対象とならない医療費があります。公助で対応できない部分は自助あるいは共助で準備する必要があります。入院や手術への備えとして共助である民間の医療保険に加入する人が増えていますが、民間の医療保険は一般的に加入時の年齢で保険料が異なり、年齢が高いほど保険料が高くなります。このため、加入時の年齢によっては保険料が割高になったり、一定期間ごとに更新するタイプの医療保険は更新ごとに保険料が高くなる場合があります。医療保険に加入して病気の一時支出に備えたほうがよいのか、保険料に相当する金額を預金しておき、自助で病気の一時支出に備えた方がよいのか年齢により検討する必要があるでしょう。

このように老後のリスクは、現役世代のリスクと異なる特徴があります。現役世代に比べて収入喪失や病気などのリスクが高くなる半面、扶養する家族が少なくなるので死亡保障など死亡のリスク対策の必要性が低くなります。貯蓄性の高い死亡保障である終身保険などを契約している場合は、死亡保障の必要性が少なくなった後、死亡保障を介護保障や医療保障、個人年金などに変更できる商品があります。自分にとって必要な保障が何なのか、年齢ごとに見直して老後のリスク対策をたてましょう。

※この記事は、掲載当初協賛を受けて制作したものです。

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