新たな67字のほとんどは名前に不向き
新たに追加された漢字は、名前には不向き
平成22年11月30日の常用漢字表の改訂で新たに196字が追加され、5字が削除され、全体の数としては191字増えました。名前に使えるのは常用漢字のほか人名用漢字がありますが、増やされた191字の常用漢字の中にはすでに人名用漢字の範囲に入っている字も多く、今回新たに名前に使えるようになった字は67字です。
この中に名前に向く字はどれくらいあるかということですが、強いてあげれば「憬」の字が「心にはっきり描く」「あこがれる」という意味をもち、ケイと読みますから、ケイタ、ケイスケ、ケイゴなどいろいろな名前は作れます。ただ残念ながらその他は名前に向くような字はほとんど見つかりません。
とくに名前に向かない字としては、普通のパソコンで変換のできない字が4つあります。そのほか意味の上から名前に使えないような字も多く、「骸」、「鬱」、「罵」、「貪」、「斬」、「嫉」、「怨」、「羞」、「唾」、「訃」、「蔑」、「慄」、「賂」、「溺」、「呪」、「淫」、「毀」、「傲」、「叱」、「尻」、「綻」、「惧」などかなりあります。
そのほかは悪い意味ではなくても、「踪」、「哺」、「箋」、「麺」など、ほとんどは名前に使いようのない字です。
おかしな名前が急に増える可能性は少ない
ではこうした字を使って、とんでもないおかしな名前が実際につけられることがあるのか、ということですが、もちろんそれは予想できません。ただこれまでの経過をみますと、たとえば平成16年に法務省が大量に追加した488字の人名用漢字や、過去に個人が起こした訴訟によって認められた8つの漢字のうち、「琉」、「煌」、「駕」、「昊」、「湊」、「琥」、「苺」、「惺」などの字は名前によく使われ、とくに「琉」、「駕」は人気のある字ですが、その他のほとんどの字は見向きもされていないのです。そういうことから察しますと、今回の常用漢字の改訂でとくに予想外の名前が増えるとも考えにくいのです。
範囲の決め方こそが根本の問題
常用漢字というのはもともと旧文部省が定めたもので、人名とは何の関係もありません。人名のために特別に法務省が定めた人名用漢字ですら、実際は名前のことは一切吟味されずに範囲が決められています。その結果、これまででも名前に使える常用漢字や人名漢字のうち大半が名前に向かない字でした。ですからおかしな名前が増えることを心配するなら、今回のわずか66字のことよりも、そもそも名前に使える漢字の範囲が「常用漢字と人名用漢字のすべて」と大ざっぱに決められていて、名前に適するかどうかが一切吟味されていないことが問題にされなければならないでしょう。