ピッキング・泥棒の対策/ピッキング・空き巣を防ぐ

自分で証拠を消してしまった主婦の悲劇

何気ない日常の風景の中にこそひそむ危険があります。「まさか」の思いが招いた大失敗の顛末。キレイ好きな主婦ならではのミスかもしれません。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

どこにでもいそうな主婦

和室の畳が

和室の畳が

主婦の石川美奈子さん(仮名)36歳。夫はサラリーマンで、不況とはいえなんとか専業主婦をやっています。子どもが二人とも小学校に上がったので、そろそろパートでも、と思いながら、小学校のPTAの役員が順番で回ってきてしてまい、「今年はしょうがないわ」
と、忙しい日々を送っていました。

美奈子さんはキレイ好きで、家の中をいつでも誰が来てもいいように整えておくのが生きがいです。小学生の息子の友だちが遊びに来た後は、しっかりと床や畳を拭き掃除します。

ある週末の午後、2人の子どもたちはそれぞれ遊びに行き、夫婦で外出して夕方に帰宅すると、家の鍵はかかっていませんでした。鍵を開けたまま、子どもたちがでかけたことにも腹を立てましたが、それよりも美奈子さんは、床が汚れていることにまず気がつきました。

「んもう、信じられない! あの子たちったら」

てっきり、子どもたちが友だちでも呼んで家の中を汚したのだと思い込み、荷物を置くのもそこそこに、急いでゾウキンを取り出して、床を拭きだしました。畳の和室にも汚れはついており、「いやだわ。まるで土足で家の中を駆け回ったみたい」と、ブツブツと言いながら、すっかり汚れを取り去りました。

「ふぅ。本当にひどいわぁ。もうお友だちを呼ぶこともやめさせようかしら」
 

「まさか」の状況

思わず拭き掃除を

思わず拭き掃除を

夫に話をしなくてはと、リビングルームに戻ろうとしたときに、美奈子さんはハッとしました。何かいつもと違うものが目に入ったのです。それは、庭に面した和室の掃き出し窓でした。

よく見ると、窓のクレセント錠のあたりのガラスが割れていました。そして鍵は開いた状態でした。ドキンとして、頭の中がグルグルとしたようでしした。やっと我に返ると、夫を呼びました。

「あなたぁ、あなた、早く来て、こっちこっち」

いつもと違う妻の声に何かを感じたのか、夫がすぐに和室にやってきました。

「どうした?」
「これ、こ、ここ。見て」
「えっ? あっ!! これは」
「ねえ、どうしましょう? これって」
「落ち着け。何か盗まれたものはないか、よく見てみよう」

夫と二人で貴重品などを入れてあるタンスがある夫婦の寝室に行ってみると、タンスの引き出しが段々に全部開けられており、1番上の小引出しに入れてあった現金約20万円と預貯金の通帳と印鑑などがなくなっていました。数は少ないものの、真珠のネックレスや指輪、ダイヤモンドの指輪などもなくなっていました。

「け、警察に、で、電話しないと」

息も絶え絶えに美奈子さんがそう言うと、夫が急いで110番通報をしました。美奈子さんはリビングのソファにぐったりと座り込んでしまいました。自宅は泥棒に入られていたのです。美奈子さんは床や畳の汚れを、子どもたちが汚したものと思い込んでしまって掃除をしてしまっていたのですが、実は、泥棒が一階和室の窓ガラスを割って、侵入して土足で動き回ったあとだったのです。
 

想定外の出来事が証拠隠滅?

まさか、我が家が泥棒に入られるとは思っていもいなかったので、床の汚れが泥棒の土足のあととは思いもしなかったのです。美奈子さんは、泥棒の痕跡を、自分の手で消滅させてしまったのでした。

警察が来て事情を訊かれ、おそらく和室の窓ガラスを割って侵入した泥棒が家の中を土足で動き回って、内側から玄関の鍵を開けて逃走したのだろうということになりました。しかし、なにしろ大切な証拠の「足跡」を、美奈子さんがすっかり消してしまっていたので、どのように動いたのかは推測しか出来ませんでした。

その後も、この泥棒は捕まっていません。「まさか」と、泥棒が入ることを想定していなかったがために、キレイ好きな主婦・美奈子さんは、自らの手で証拠を消してしまいました。あり得ないような話ですが、「思い込み」が招いた悲劇といえるでしょう。(実際にあった事件を元に構成しました)。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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