脳卒中後に65%が発症する「痙縮」とは
QOLに影響し、介護が必要になることもある後遺症。適切な治療法は?
痙縮症状のある患者さんは決して少なくなくありません。日本では脳卒中後の後遺症で55万人。その他、頭部損傷や脊髄損傷等での後遺症で8万人ほどの患者さんがいると推計されています。脳卒中後65%以上の人が痙縮を発症してしまうことは深刻な問題です。
痙縮の主な治療法
これらの痙縮症状が長く続くと、筋肉が固まって動きにくくなる「拘縮(こうしゅく)」になることも。日常生活にも支障が生じたり、リハビリの障害になることも問題です。QOLを損なわないよう、適切な治療が望まれています。痙縮の主な治療法は、内服薬、ボツリヌス療法、神経ブロック注射、外科的療法など。患者さんの病態や治療目的を考え、リハビリテーションと組み合わせて、治療が行われています。これら従来の方法に加え、この秋新たな治療法として生まれたのが、グラクソ・スミスクライン社の「ボトックス」。「上肢痙縮、下肢痙縮」に対しての効能が承認され、新しいボツリヌス療法が可能となりました。
ボツリヌス療法のメリットと今後の展望
ボツリヌス療法とは筋肉を緊張させている神経の働きを抑える作用がある「ボツリヌストキシン」を有効成分とする薬を、筋肉注射する治療法。このボツリヌス療法によって、手足の筋肉がやわらかくなり、動かしやすくなるので、日常生活の動作が行いやすくなります。これに伴い、リハビリテーションや、筋肉が固まることの防止はもちろん、痛みの緩和も期待されています。ボツリヌス菌そのものを注射するわけではないので、食中毒を引き起こすボツリヌス菌に感染する危険はありません。この治療法は世界80カ国以上で認められており、これまでに9万人の人がこの治療法を受けています。
特に重症の痙縮患者さんの場合は、介護費用、医療費などの経済的負担が軽減され、自分でいろいろな動作ができるようになることで、精神的負担が軽くなるメリットは大きいでしょう。症状を軽減してくれる新しい治療法は、介護者にも大きな希望を与えてくれそうです。