スト権(ストライキの権利)は日本憲法で保障されている
ストライキの権利は憲法で保障されいてる
憲法で保障されているはずのストライキの権利を確立するとは、いったいどういうことでしょうか?雇用者による不当な労働者の搾取行為を防ぐため、世界のほとんどの国で労働者は団結して雇用者と戦う権利が認められています。
日本では日本国憲法第28条に「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」とありますが、この条文が労働者が団結して組合を結成する団結権利と、ストライキなどを行う団体行動権を保障しています。さらに憲法第28条に規定された団結権利や団体行動権を具体的に定める法律として、労働組合法や労働関係調整法があります。
スト権の確立とは何?確立とはどういう意味?
日本の憲法や法律で労働者がストライキを行う権利は保障されているので、法的には特にそれ以上権利を確立する必要はありません。しかし、ストライキの実行は雇用者・労働者両方にとって非常に影響の大きい行為であり、そう簡単に実行できるものではないでしょう。多くの労働組合では、労働組合規約などの内部規約で、「ストの実行には組合員の○分の○以上の賛成を必要とする」などルールが決められています。これが、俗に言う「スト権の確立」です。ストライキとは、会社の多くの労働者が参加して始めて意義のあるものになります。例えば、100人いる労働組合があって、ある人が「よし!来週ストライキをやろう」と考えたとしましょう。しかし、その人が他の組合員にストライキを呼び掛けても、賛同してくれる人はあまりいませんでした。結果として次週にストライキに参加したのは、その人を含めてたったの3人だけ……。これでは、単なる無駄な努力で終わります。効果のないストライキを実行しても、会社の心証が悪くなるだけでしょう。
そのため、多くの労働組合ではストライキを実行する前に組合員で投票を行い、一定数(大抵は半数か3分の2)以上の賛成票を得て、それからストを実行するルールを定めています。
政府が公務員にスト権付与を検討
すべての労働者に対して基本的に認められているストライキの権利ですが、日本では公務員には認められていません。それは公務員が公共の利益を守る存在であるため、ストライキに入って仕事を止めてしまうと、国全体の機能に影響が及ぶためです。しかし、最近政府内で公務員にスト権を付与しようという動きが起こっています。これが認められると、公務員でも民間企業の社員と同じようにストライキを行うことができます。もともと公務員のスト権は国によっては認めているところもあり、世界中の国が禁止しているものではありません。例えば、ヨーロッパのイギリスやフランスでは、警察官など一部の職種を除いて、公務員にスト権が認められています。そのためイギリスやフランスでは、公務員のストライキも毎年のように行われています。
スト権を無理に付与しなくてもという意見も
スト権について議論をする時には、公務員の待遇の良さも考慮して進めて行くことが必要です。日本の公務員雇用制度は、新卒で一度採用されるとよほどのことがない限りはそのまま定年まで勤めることができ、解雇される可能性が極めて低く、このような雇用制度は、世界でもまれにみる恵まれた待遇です。無理にスト権を付与しなくても、十分に権利は与えられているという意見もあります。もちろん、厳しい日本の財政事情を考えると、今後ずっとこのような好待遇が続くという保証は全くありません。資本主義経済が続く限り、「労働者と雇用者の対立」は永遠に続きます。その中で存在する「ストライキの権利」は、労使両方にとって、極めて重要なものであり続けるのは間違いないでしょう。
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