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一冊まるごとミステリー!「オールスイリ」

乾くるみ、奥泉光、米澤穂信、湊かなえ、辻村深月、有栖川有栖、麻耶雄高、桜庭一樹、森博嗣…人気作家が勢揃いの読み切り小説誌「オールスイリ」に注目です!

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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オール讀物増刊「オールスイリ」に注目!

オールスイリ

「オールスイリ」

人気作家の読み切り小説とエッセイを収録した「オールスイリ」が11月18日に発売されました。乾くるみ、奥泉光、米澤穂信、湊かなえ、辻村深月、有栖川有栖、麻耶雄高、桜庭一樹、森博嗣…執筆陣を見ただけでも、ミステリーファンならわくわくするはず。

まず、巻頭の「軽い雨」(米澤穂信)は、四つの市町村が合併して生まれた南はかま市を舞台に、無人地区の定住者募集に応じてやってきた二つの家族をめぐるトラブルを描きます。シニカルな結末が印象的な中編です。

収録作中もっとも長い「嫉妬事件」(乾くるみ)は尾籠な話。サークル一の美女が他大学から恋人を連れてきた日、城林大学のミステリー研究会の書棚に置かれた爆弾は檸檬ではなく、書くのもはばかられるブツでした。○○○爆弾を仕掛けたのはだれか? 部員たちは推理合戦を繰り広げます。意外な犯人もさることながら動機にぶっ飛ぶこと請け合い! わたしは爆笑しました。

「森娘の秘密」(奥泉光)も、不気味な笑い声をもらしながら読みました。月給110,350円の下流大学教師・桑潟幸一(通称クワコー)と、彼の研究室を占拠する文芸部員の面々が、セクハラの嫌疑をかけられている教授の部屋から消えた“森娘”の正体を探ります。学校の裏手の林にダンボールハウスを建てて住むホームレス女子大生だの、「時がこわれたとき」という小説を書き壊滅的な日本語でしゃべる文芸部員だの、『ヤクザに学ぶリアル経営術』という著書があるナマズ顔の教授だの、登場人物はキャラが濃すぎる変人ばかり。その変人たちの日常を綴る文体も諧謔に満ちています。

ユーモラスな作品もあれば「芹葉大学の夢と殺人」(辻村深月)のような切ない一篇もあってバラエティ豊か。ミステリーって愉しい! と思わされる一冊です。

■DATA
タイトル:「オールスイリ」
出版社:文藝春秋
価格:880円(税込)
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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