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ゲームは遊び相手か、遊び場か(2ページ目)

あるゲーム開発に携わる方とお話ししていた時に、すごく印象に残った一言がありました。「ゲームって、環境を提供するものになりましたよね。」これだけでは、ちょっと分かりにくいかもしれませんが、実は、今のゲーム業界、ゲーム市場の現状を実に端的に表現しています。「環境を提供するものになったゲーム」をキーワードに、今までのゲームとこれからのゲームについて、考えてみたいと思います。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

遊び場であり、審判役であり、ルールであるゲーム

PSPで遊ぶ高校生の図

もちろん1人でも遊べるわけですが、みんなで遊ぶ為のツールとしての役割が、より大きくなってきています。

2010年、最も売れるゲームはおそらく、既に400万本以上を大きく超えて販売本数を伸ばし続けているニンテンドーDS(以下DS)のポケットモンスター ブラック・ホワイト(以下ポケモンBW)でしょう。その次に売れるのはなんでしょうか。最有力候補はPSPのモンスターハンターポータブル 3rd(以下モンハンP3)かもしれません。この2つのゲームに共通するのは、誰かと遊ぶことを想定して作られたゲームであるということです。他にも売れているゲームを挙げるなら、WiiPartyや2009年から引き続き売れているNewマリオブラザーズWiiなど、誰かと遊ぶことをゲームの軸に持ってきているタイトルがたくさんあります。

このことが何を意味しているかというと、ゲームの役割に変化が起きているということが言えます。もちろん、前述した通り、1人で遊ぶ際の遊び相手としての役割は依然として重要です。それはポケモンBWやモンハンP3においてもそうでしょう。しかし、より重要なのは、誰かと遊ぶためのツールとして完成度が高いということです。

つまり、遊び相手としての役割は必要でありつつも、みんなで遊ぶ遊び場であり、公平な審判役であり、遊びのルールとして、質の高いものが求められます。

WiiとPS3やXbox 360の違い

Kinectアドベンチャーの図

PSムーブやKinectの初期タイトルには、みんなで遊べるゲームが非常に多いことからも、環境としてのゲーム性能を高めようとしていることがうかがえます。

据え置きゲームにおける各ハードの市場についても、この遊び場、審判、遊びのルール、つまり誰かと遊ぶための環境としての役割が重要になっていることである程度説明ができます。

WiiとPS3やXbox 360を比較して、ゲーマーの遊び相手としての力量は、PS3やXbox 360の方が圧倒的に高いでしょう。しかし一方でWiiは色んな人と一緒に遊ぶ環境を提供する役割としては大変に優秀なハードです。それは、Wiiリモコンでボタンをあまり使わず簡単に操作できたり、誰でもすぐにルールが理解できるシンプルなソフトがメインのタイトルとして最初から用意されていたり、また、それらが話題になって多くの人の興味関心の的になったということも、大きなポイントです。

PS3やXbox 360は、Wiiが大きく取りこぼしている遊び相手としてのゲームが必要なゲームユーザーを、2つのハードで取り合って市場を構成していますが、累計普及台数でそれぞれWiiから遅れをとっています。この状況を打破するべく、PS3やXbox 360は、PlayStation Move モーションコントローラー(以下PSムーブ)やKinectでみんなで遊ぶ環境としてのゲーム性能を高めようとしているのが、現時点です。

ちなみに、ちょっと話がそれますが、Wiiは逆に、ゼノブレイドやメトロイド アザーエムなど、1人でじっくり遊ぶゲームの充実に2010年は取り組んでいました。

それまで、遊び相手を提供してきたゲームは、ここ数年で、遊び相手だけではなく、誰かと遊ぶ環境としてのゲームを求められるようになりました。このことは、ゲーム業界のこれからに大きな影響を与えていくことになります。
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