国民年金に限りなく近づけた条件で保険料を試算してみると……
ご承知だとは思いますが、国民年金(基礎年金)は、老後の生活保障(老齢基礎年金)、障害状態になったときの障害保障(障害基礎年金)、被保険者が死亡した後の家族の生活を支える遺族保障(遺族基礎年金)の3つの保障がセットされた国の保険制度です。この保険を民間生保の保険で近いと思われる種類に対応させると、老後の生活保障は個人年金保険の終身年金、障害保障は介護保険、遺族保障は定期保険または収入保障保険となります。まず、終身年金と国民年金(老齢基礎年金)を比べてみましょう。老後の生活費のベースとなる老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間にわたって保険料を納めると、65歳から死亡するまで満額の年金が受け取れます。保険料も年金額も法律の規定で毎年見直され、令和2年(2020年)度は、月1万6540円、満額の年金額は78万1700円です。これは、60歳保険料払込満了、据置期間5年、65歳年金受取開始という条件になります。
終身年金でこれと全く同じ条件を設定することは難しく、取り扱っている保険会社も少なくなっています。また、78万1700円という中途半端な年金額を設定することもできません。そこで、現在、販売されている終身年金で、この条件に限りなく近づけた月払い保険料を調べてみました。
●10年保証期間付終身年金
●65歳保険料払込満了・年金開始
●年金額 60万円
女性の方が長生きなので、女性の保険料例を2つあげます。30歳加入で月約3万9000円、40歳加入で月約5万5000円でした(2020年7月1日時点)。
上記の保険料は、払込期間は国民年金より短く、国民年金にはない保証期間が10年ありますが、年金額は60万円と少なく、将来インフレになっても、この金額は変わりません。30歳で加入しても40歳で加入しても、払込保険料の総額は1600万円を超えてしまいます。
その一方、国民年金の保険料は毎年若干変わりますが、現在の水準で40年間払い込んでも、総額は800万円に届かず、民間保険の半分以下です。受取時には、そのときの物価や賃金の上昇に応じて、多少とも年金額が上がるしくみもあります。これらを考えれば、民間の保険に比べ、国民年金の保険料のほうが超割安ということです。
国民年金はなかなか優れた保険!?
営利を追求する民間会社と、営利を追求しない国の制度を比較するのは、少し乱暴と思われるかもしれません。が、あえて、このような試算を行ったのは、国民年金保険料の未納率が約30%と高止まりしていることを憂えているからです。未納者の中には、民間の保険で備えた方がましと考えている人がいて、そういう人に対して、そうではないことをお知らせしたかったのです。もしも、国民年金と同じ保障を民間の保険で得ようとしたら、前述の終身年金の保険料の他に介護保険の保険料、定期保険か収入保障保険の保険料も必要になります。それらを合計すると、一体、月々いくら負担すればいいのでしょうか? それが、国民年金は、年齢・性別に関係なく保険料は一律1万6540円なのです。なかなか、優れた保険だとは思いませんか?
それに、国民年金保険料を払っているとおトクなことがあります。将来、税金を取り戻せるのです。基礎年金の支給には、50%の税金が投じられているからです。実は、民間生保の終身年金より保険料を割安にできるのは、税金が投入されていることも1つの要因なんですね。つまり、老後に年金を受け取ることで現役時代に納めた税金の一部(全部または全部以上の場合も)を取り戻せるということです。
国民年金保険料を未納にしていて、このまま受給資格を得られないと、将来、年金と一緒に税金を返してもらう機会も放棄することになりますよ。もし、納めるお金のない人は保険料免除を申請し、受給資格を失わないようにしましょう。
年金制度はいろいろな問題があり、また、政権が変わると、制度そのものが変わる可能性もあります。今後、多くの国民が納得して安心できる年金制度が構築されるよう注視していきましょう。
※All About生命保険ガイド・小川千尋さんの記事を編集部が最新情報に加筆
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