エコカー/エコカー関連情報

今までなかった“新しいエコカー”シボレーボルト(2ページ目)

発電用にエンジンを積んだ量産モデル初のレンジエクステンダー、GMボルト。充電した電池で最大80kmまで走行、その後はエンジンが発電用モーターを回すことで約500kmまで走れる新しいクルマの市販モデルに上海で試乗しました。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド


最大のメリットは電池が切れても500km走ること

車両の基本情報を挙げておく。
・ フロントドライブの5ドア4人乗りサルーン
・ 2つのモーター(駆動用/発電用)+リチウムイオンバッテリー搭載
・ 新開発プラットフォーム採用
・ バッテリーはT字型でセンターコンソール下に設置
・ 発電用1.4リッター直4DOHCエンジン搭載
・ 北米価格4万1000ドル
・ 日本市場への導入は2012年以降
シボレーボルト

サイズは全長4498×全幅1788×全高1578mm、ホイールベース2685mm。軽量17インチアルミホイールに、低転がり抵抗のグッドイヤー製タイヤを装着する

EVか否か。まずはエンジンを積んでいるのだから、それはレンジエクステンダー、いわゆるシリーズ式ハイブリッドカーだろうという意見が出た。これはそのとおりで、ボルトは最大80kmまで走れる量が充電されるリチウムイオンバッテリー(16kWh/198kg)+駆動用モーター(111kw)のみで走るが、そこから先は再充電するか、1.4リッターのガソリンエンジンを炊いて発電用モーター(54kw)を回し電気を駆動装置に送り込まなければならない。逆に言えば、ガソリンさえあれば、フツウの自動車のように距離を伸ばせるという点がボルト最大のメリットであり、純粋なEVにおける“切れたら停まる”という心理的不安を取り除いてくれる。

ちなみに、ガソリンはハイオクで、タンク容量35リットル。これで最大およそ500km(310マイル、EV領域含まず)走るという。

GMとしてはたとえエンジンを積んでいても、そのエネルギーを直接使うわけじゃなく、常にモーターが(電気的な)駆動装置になっているのだからEVなのだ、と主張しているに過ぎない。事実、世界で最も排ガス規制の厳しいカリフォルニア州では、発電用エンジンの排出ガスが問題視され、EVやPHVと同様の優遇措置は、2011年モデルにおいては受けられない旨、発表された。GM側は、2012年モデル以降で挽回すべく、モーターやバッテリーにさらなる改良を続けると応えている。

もうひとつ問題となったのは、エンジンが直接、通常のクルマと同様に、車軸との機械的/物理的な繋がりをもっているか否か、ということだった。つまり、プリウスのようなプラグインハイブリッド車の仲間ではないか、という指摘だ。これにも、そう疑う根拠があった。プリウスと同様に2つのモーターと1つのエンジン、そしてプラネタリギアによる動力分割装置を用いており、実際にレンジエクステンド領域で試乗すればあたかもエンジン動力が車軸に伝わっているかのようなグラフィックが立ち現れしかもアクセル開度に応じてエンジン回転数も上下することが、その根拠だったと推測される。(さらにもうひとつ言えば、モード別走行制御におけるマウンテンモードの記述にも誤解を招く表現があった)

ただし、詳細に仕組みを観察してみれば、遊星歯車におけるリングギア、サンギア、プラネタリギアにそれぞれ繋がる装置の構成がプリウスとは全く異なっており、あくまでも駆動力は電磁的駆動装置によって供給されているというGMの主張も成り立つ。“だったらエンジン動力も積極的に直接使った方が効率的なんじゃない? ”と言いたくなるが、そうすればトヨタの特許包囲網に絡めとられるハメになっただろう。
シボレーボルト

288個(重量198.1kg)のリチウムイオンバッテリーは、9つのバッテリーモジュールでポリマーコートのアルミ製筐体に収められセンタートンネル部に搭載。充電時間は120Vで約10~12時間、240Vで約4時間となる。バッテリーはアクティブ液体制御システムによって温度をリアルタイムに管理される

もっとも今回のボルト騒動で明らかになったことは、その呼び方云々の問題などではなく、エンジンを純粋な発電機として使用するレンジエクステンダーであっても、内燃機関そのものの効率化が問題になるということであり、それは他のハイブリッド方式についても言えることで、やはり自動車メーカーとしてはより一層効率的な内燃機関の開発(もしくは調達)を考えなければならないということだ。今後は、マツダのSKYACTIVやロータリーのようなテクノロジーのみならず、小型内燃機を得意とする、けれども我々が名も知らぬメーカーに陽が当たることさえ、十分にあるだろう。
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