食と健康/生活習慣病を防ぐ食事・レシピ

LDLコレステロールは悪者なのか?

コレステロールは増えすぎると動脈硬化の原因になりますが、不足もよくありません。また以前とはコレステロール値の基準や捉え方も変わってきています。コレステロールは、体にどのように関わっているのか、食事はどのように影響しているかについてご紹介します。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

コレステロールって、なに?

コレステロール"
あなたのコレステロール値は大丈夫ですか?
コレステロールは、血液中の脂質の1種。他にも、中性脂肪・リン脂質・遊離脂肪酸などがあります。

脂質のうち、遊離脂肪酸や中性脂肪は、エネルギーとなるものですが、コレステロールとリン脂質は細胞膜の構成成分となり、さらにコレステロールはステロイドホルモンの材料、胆汁酸の材料、ビタミンD前駆体の材料となります。

私がセミナーなどをした際に、「コレステロールは体に悪いからとらないほうが良いのでは」といった質問を受けることがありいます。ではもしコレステロールが不足すると、どうでしょう。細胞膜や赤血球や血管の細胞膜が弱くなり、高血圧が伴うと脳卒中が起こりやすくなることが知られています。

ですから、決してコレステロールそのものが悪者ではないということは理解していただきたいと思います。

コレステロールは、どこから来てどこに行くの?

厚生労働省の「食事摂取基準」によると、コレステロールについては次のようにまとめられています(概略をまとめます)。

コレステロールは体内で合成できる脂質で、12~13mg/kg体重/日(体重50kgの人で600~650mg/日)生産されています。摂取されたコレステロールの40~60%が吸収されますが、個人差が大きいとみられています。

食事から摂取されたコレステロールは、体内でつくられるコレステロールの1/3~1/7に過ぎません。成人女性で600mg未満が目安といわれています。

体内でつくられるコレステロールは、食事からの摂取量が多ければ、体内で合成される量が減らされるように、うまくバランスをとっています。

コレステロールを体の必要な部分に届けるためには血液にのせなければなりませんが、脂質は溶けにくいため、リン脂質やタンパク質で包むことで親水性の「リポ蛋白」をつくり、血液にのって運びます。

コレステロールの悪玉と善玉

リポ蛋白は、次のように比重の重さやリポ蛋白の合成・代謝からみて、5つに分かれます。

■リポタンパク質の種類と働き
  • カイロミクロン・・・中性脂肪が約80~90%。残りはコレステロールとリン脂質。
  • 超低密度リポ蛋白(VLDL)・・・中性脂肪が55%、コレステロールとリン脂質つはそれぞれ約20%。食事から肝臓で合成され血液中に分泌され、中性脂肪が分解されてIDL、LDLへと変化する。
  • 中間密度リポ蛋白(IDL)・・・中性脂肪が約40%、コレステロールが約35%。VLDLの中性脂肪が分解されるLDLに変わる中間のリポ蛋白。
  • 低密度リポ蛋白(LDL)・・・コレステロールが約45%、中性脂肪・リン脂質が約20%。過剰になると血管に蓄積する。
  • 高密度リポ蛋白(HDL)・・・リン脂質が約50%、コレステロールが約30%、中性脂肪が約3%。

上のものほど、粒子のサイズは大きく、比重は小さくなります。

コレステロールを主に運んでいるのがHDLとLDLで、LDLは肝臓で作られたコレステロールをカラダの各組織に運び、これにのっているコレステロールはLDLコレステロールと呼ばれます。また、HDLはカラダの隅々の各組織で余ったコレステロールを肝臓に送り返す役目で、これに積まれたコレステロールはHDLコレステロールと呼ばれます。

LDLコレステロールは血液中にコレステロールが増えすぎると動脈硬化の原因となると考えられていたので、俗に「悪玉コレステロール」と呼ばれ、HDLコレステロールは掃除役となるので「善玉コレステロール」と呼ばれていますが、医学用語ではありません。

定期的にコレステロール値をチェック

血液中にある脂質のうち、LDLコレステロール値が140mg/dL以上、中性脂肪値が150mg/dL、HDLコレステロール値が40mg/dl未満のいずれかに該当すると、脂質異常症(日本動脈硬化学会基準)です。これはあくまでスクリーニングのためで、薬物治療開始のための値ではありません。

脂質異常症については、詳しくは脂質異常症の記事をご覧ください。

以前の「高脂血症」から「脂質異常症」に変更され、総コレステロール値は基準からはずれました。また健康な中高年の場合は総コレステロール値が少し高めの人のほうが、死亡率は低いことも知られています。

もちろん極端な高数値になると死亡率は高くなりますし、他に高血圧や糖尿病などとの関わりも重要になります。

女性の場合は、女性ホルモンのエストロゲンがコレステロールを調節していますが、更年期になってエストロゲンの分泌が低下すると、一般的にコレステロール値が上昇しやすい傾向が見られます。

コレステロール値については、日本人間ドック学会から2014年に新基準案が発表されていますが運用は未定で、他の学会もそれぞれの考え方を示しています。

このように、一概に検査値だけでは判断できませんが、毎年血液検査を行い、数値に大きな変化がないか、変化があるとすれば食生活や生活習慣の変化を省みて改善する等、自分で健康管理に役立てることが有効だと思います。

怖いのは超悪玉コレステロール

最近の研究などで注目されているのは、LDLコレステロールの中でも粒子サイズが小型のsmall dence LDL(sdLDL)コレステロールで、俗に「超悪玉」と呼ばれています。

LDLが増えて血液中で停滞すると、サイズが小さいので血管壁にどんどん入りこんで血液中に長時間滞留します。さらに酸化しやすく、動脈硬化の要因となり、冠動脈疾患の危険因子とされています。

動脈硬化は、初期には自覚症状がありませんが、進行すると心筋梗塞や脳出血など、深刻な疾患につながりやすいですから、予防が肝心です。コレステロールの量を増やし過ぎないこと、そして酸化を防ぐことも重要な対策になります。

次ページでは、コレステロールの摂取制限の是非と、増やさないための生活習慣を解説いたします。


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