雑貨/ハンドクラフト・工芸

倉敷民藝館で、暮らしの道具を味わう(2ページ目)

素朴で健やかに美しい民芸の道具。今年で60周年を迎える、倉敷民藝館を訪ねました。倉敷ガラスやカゴのコレクションも必見です。「倉敷民藝館名品展」も開催中(2008年12月7日まで)。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド



世界各国から集まったたくさんのカゴたち

カゴだらけの部屋があります。
世の中にはどうも「カゴ好き」という人が多いようですが、この民藝館の 初代館長だった外村吉之介さんもカゴが大好きだったようです。 館内にはカゴばかりがずらりと並んだ「カゴの部屋」があって、 世界各国の様々なデザインのカゴが陳列されています。 美術鑑賞というよりも、もうここは素直に「かわいい!」と思って観てしまうのが 楽しいでしょう。 外村さん自身もカゴを片手に、自ら来館者に民芸について説明されていたとか。 外部からの講演の依頼にも、いつもカゴ持参で出かけていたそうで、 ちょっとかわいく微笑ましいおじさまに感じてしまいます。

カゴいろいろ
様々な形のカゴたち。見ていて飽きません。


カゴ以外の展示品も、どこかほのぼのとした愛らしさを漂わせているのが、 外村さんセレクトの特徴かもしれません。 きれいな色使いだったり、動物モチーフだったり、細かな装飾があったりして、 乙女心をぐっと捉まれるような民芸品が多いのです。

展示品いろいろ
細かい部分まで興味深いので、丹念に眺めてしまいます。


左上の小さな棒のようなものの集まりは、イギリスの糸巻。レース編みに 使われていたようですが、先端にカラフルなビーズ飾りが付いていて、いちいちかわいいです。 右上の布はイラン製。フェルト地で、模様が生き生きと鮮やか。 真ん中左のガラスは、フランス、メキシコ、イランなどのコップやうつわ。 色使いが独特で美しく、使い勝手を考えた無駄のないフォルムになっています。 そして真ん中右は、なんとお餅!日蓮宗のお供え物で、今でも作られている岡山独自のものだそう。 色や形がちょっととぼけていてかわいらしく、アクセサリーにでもしたくなります。 下の左は中庭に置かれている道祖神たち。ひとつひとつ顔の表情が微笑ましいです。 下右は、厨子甕(じいしいがみ)と呼ばれる沖縄の骨壺。 沖縄の風土を反映してか、お祭り道具のようなカラっとした明るさを感じます。 厨子甕には必ず窓が付いていて、魂が自由に出入りできるようになっているんだとか。なんとも大らかです。 よく見ると守り神のような人物も彫られているのですが、どことなく笑っている表情なのです。

「倉敷民藝館名品展」を開催中

スペインの蜀台にドイツの大皿で田舎風ディスプレイ。
倉敷民藝館は今年で開館60周年。それを記念して、現在「倉敷民藝館名品展」が開催されています。(2008年12月7日(日)まで)。膨大な所蔵品の中から、 選りすぐりの約170点が展示されています。 地元岡山の手仕事の道具、沖縄の染織品、イギリスの陶器やスリップウェア、 木工品や家具など多岐に渡っています。 「そばにあってほっと安心するもの、素直で健康的で、見ると笑顔になれるようなもの、 ずっと一緒にいたいと思えるもの、などが民芸の魅力ではないかと思います。」 と学芸員の高吉利江さん。民芸とは元々生活のための必要から生まれた道具たち。 奇をてらうことなく、毎日の暮らしに寄り添い、日々目にして使うものです。 また、家族の温かさや素朴な願いが込められているように思います。 民芸館を訪れることで、自分の暮らし方のヒントを見つけることができるかもしれません。

民画
ひょうきんな表情に思わず笑みがこぼれます。


さて、名品展の中でも心を捉えられてしまったのが、ププっと笑ってしまいそうなこの絵画。 19世紀の朝鮮のもので、民画と呼ばれるもの。きちんとした絵の教育は 受けていない人たちによって描かれているので、遠近法が独自だったり、 想像を超えるユニークな描き方をしているようです。 また朝鮮では、部屋によって飾る絵がだいたい決まっており、 子供部屋には「文字絵」と呼ばれる漢字をモチーフにした絵を掛けて、 子供に儒教の思想を教えていたり、お父さんの部屋には「文房図」という書棚に本がたくさん積まれた絵を掛けて、出世を願ったりしたのだそうです。 そういった朝鮮の民画もいろいろ展示されており、ディティールを見るほどに面白いものが多いので、 よく眺めてみてください。



最後にミュージアムショップへ

入り口近くにショップコーナーがあります。
展示を堪能した後は、ミュージアムショップを覗いてみましょう。 大きなお店ではありませんが、品揃えは充実しています。 地元倉敷のガラスや緞通、花むしろ、焼物などはもちろん、 全国各地の民芸品が集まっています。 倉敷民藝館の図録や、冊子「民藝」も販売。 今回の「倉敷民藝館名品展」の図録も販売されており、表紙は染色家・柚木沙弥郎氏 がデザインしています。

ショップ
小さなコーナーなのに、すっかり長居してしまいました。


また、倉敷民藝館では地元作家を育てようという意向があり、 中庭を開放した「民藝市場」も開催しています。 若い作家たちが自らの作品を持ち寄り、 観光客や地元の人たちと交流しながら販売。 民芸を身近に感じて親しんでもらえるよう、力を注いでいます。 「倉敷は、手仕事に対して温かい目があると思います。 ものづくり作家もずいぶん増えましたし、ギャラリーの多い地域でもあります。 地元でがんばっている人たちを少しでも応援していければと思っています」。

「民藝」というとどことなく堅苦しい印象もありますが、 これらは全て生活を美しくする道具。使ったら気分良いだろうなぁ、 家にあったらどう使おうかなぁ、 など考えつつ、気軽な気持ちで大らかに楽しんでみてはいかがでしょうか。


倉敷民芸館
岡山県倉敷市中央1-4-11
TEL 086-422-1637
9:00~17:00(12月~2月は16:15まで) 月曜休館
参考URL http://iwe.kusa.ac.jp/FOLK/folk_op.html



★鳥取の民芸美術館の取材記事も一緒にご覧下さい。
鳥取の手仕事を巡る旅1 民芸美術舘編



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名品展
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