外観

民藝館は、川沿いの美観地区に位置しています。


JRの倉敷駅から歩くこと10分くらい、 倉敷川沿いに立ち並ぶ、白壁黒瓦のお屋敷や土蔵群。 この辺りは倉敷美観地区と呼ばれ、江戸時代さながらの景観を残しています。 柳の並木が心地よく、ぶらぶらと散歩するだけでも楽しいところ。 昼間はたくさんの観光客が訪れる、賑やかな地域です。 この川沿いの一角に、倉敷民藝館があります。 江戸時代後期の米倉を改装した建物で、石畳の中庭のようになったスペースを 3棟がぐるりとコの字型に囲んでいます。建物自体が民芸品のひとつといってもよく、 改装を行った建築家の浦邊鎮太郎氏によると 「上品でお姫様のような建物」だそうな。 うーん、期待が高まってきました。さっそく中へ入ってみることにします。


普段の暮らしを豊かにする、工芸品が集まる

館内
木の梁や天井、床など建物自体も見応えありです。
倉敷民藝館は、東京駒場の日本民藝館に次ぐ、日本で2番目にできた民芸館です。 倉敷といえば大原美術館が有名ですが、それを建てたのは 実業家であった大原孫三郎氏。この方は民芸運動を行っていた柳宗悦氏と も交流があり、亡くなる間際に「柳さんの言っていたことをしてあげたい」と 言っていたとか。その息子である大原總一郎氏は、 父の意思を受け継ぎ、民芸館開館の実現に向けても力を注いだそうです。 世界の古今の民芸品を1万5千点以上所蔵し、千点ほどが展示されています。 焼物、ガラス、金工、木工、染織品、絵画、籠や漆器など、 日常生活に使われる様々な品を観ることができます。

チケット
チケットに描かれた模様もかわいい。


さて、受付で入場料を払ったら、靴を脱いでスリッパに履き替え、2階に上がります。 東京の日本民藝館もそうですが、靴を脱いで上がる、という行為が、 気取らない日本の普段の暮らしを思わせて、寛いだ気持ちで鑑賞できます。 展示された品々は、自分の暮らしの中にも何か取り入れられそうな、親しみやすさがあります。 一棟一棟はこぢんまりと程よい広さで、古風な個人のお宅を訪れたような気分ですが、全部回ってみるとなかなかのボリュームです。

館内
館内の様々な風景。インテリアとしても気になるものが多いです。
中庭のような石畳をぐるりと倉が囲んでいます。


右上端の写真の部屋は、奥の方が当時の日本の一般的な家庭を思わせる、畳部屋にいろり。 そして手前はヨーロッパ風の家具を配したユニークなしつらいになっています。 実際の生活のモデルルームとして考案された部屋だそうで、 当初の案では、和風な部屋の反対側にロシア風のかまどと壁にペチカを 組み込む、という様式を考えられていたとか。 この民藝館がオープンしたのは戦後まもなくで、洋の文化がどっと入ってきた時代ですが、 今見るとまた新鮮で、ちょっと憧れるようなインテリアです。 右真ん中のモダンなトリコロールの敷物は倉敷緞通。 倉敷の伝統工芸であり、丹念に編みこまれた丈夫な作りです。 潔い色使いのデザインは芹沢けい介氏(人間国宝である染織家)によるもの。和洋問わず、古さを感じさせず、どんな空間にも溶け込みます。 左下のい草をきっちりと編みこんだ椅子はトンと呼ばれ、使い勝手が良く人気者。 畳表を作るときの端っこに出た余り部分を利用しています。 詰め物をしているわけではなく、全部い草でぐるぐると巻き詰めており、 座ってみるとお尻の当り具合がよいのです。 持ち運びも簡単で小回りの利きそうな椅子。 しかし今はもう作る人がいないんだとか(誰か作って下さい!)。


ゆるやかに素朴で風情のある倉敷ガラス

倉敷ガラス
実用的でありながら優雅な佇まいの倉敷ガラス。
様々な工芸品が展示されている中で、まず目に止まったのが倉敷ガラス。 倉敷の代表的な工芸のひとつで、日常の雑器として作られる 手作りの吹きガラスです。 現在ではたくさんのガラス作家がいるそうですが、 最初に倉敷でガラスを吹き始めたのは小谷真三さんでした。 ここに展示されているものも、全て小谷さんの作品です。 元々輸出用のクリスマス飾りを作っていた小谷さんでしたが、 たまたまご縁のあった病院の先生より、コップを作って欲しいといわれたことを きっかけに、器作りを始めました。 自ら試行錯誤し、独自の創意工夫で、全ての作業工程を一人で行っているそうです。 温かく柔らかな曲線、異国情緒を感じさせる色使いやフォルム、 そして実用性にも細やかな配慮がなされています。 また、息子である小谷栄次さんも倉敷ガラスを継いでガラス作家として活躍、その作品はショップで買い求めることもできます。

倉敷ガラス
微妙な色の加減、緩やかなフォルム、どこかほのぼのとした風情が魅力。


ガラス戸棚の中に展示された、決して大きなスペースではないのですが、 ちょこんちょこんと並んだ色とりどりのガラスたちが愛おしく、 いつまでもずっと眺めていたくなるコーナーです。

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