
民藝館は、川沿いの美観地区に位置しています。
JRの倉敷駅から歩くこと10分くらい、 倉敷川沿いに立ち並ぶ、白壁黒瓦のお屋敷や土蔵群。 この辺りは倉敷美観地区と呼ばれ、江戸時代さながらの景観を残しています。 柳の並木が心地よく、ぶらぶらと散歩するだけでも楽しいところ。 昼間はたくさんの観光客が訪れる、賑やかな地域です。 この川沿いの一角に、倉敷民藝館があります。 江戸時代後期の米倉を改装した建物で、石畳の中庭のようになったスペースを 3棟がぐるりとコの字型に囲んでいます。建物自体が民芸品のひとつといってもよく、 改装を行った建築家の浦邊鎮太郎氏によると 「上品でお姫様のような建物」だそうな。 うーん、期待が高まってきました。さっそく中へ入ってみることにします。
普段の暮らしを豊かにする、工芸品が集まる
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木の梁や天井、床など建物自体も見応えありです。 |

チケットに描かれた模様もかわいい。
さて、受付で入場料を払ったら、靴を脱いでスリッパに履き替え、2階に上がります。 東京の日本民藝館もそうですが、靴を脱いで上がる、という行為が、 気取らない日本の普段の暮らしを思わせて、寛いだ気持ちで鑑賞できます。 展示された品々は、自分の暮らしの中にも何か取り入れられそうな、親しみやすさがあります。 一棟一棟はこぢんまりと程よい広さで、古風な個人のお宅を訪れたような気分ですが、全部回ってみるとなかなかのボリュームです。

館内の様々な風景。インテリアとしても気になるものが多いです。
中庭のような石畳をぐるりと倉が囲んでいます。
右上端の写真の部屋は、奥の方が当時の日本の一般的な家庭を思わせる、畳部屋にいろり。 そして手前はヨーロッパ風の家具を配したユニークなしつらいになっています。 実際の生活のモデルルームとして考案された部屋だそうで、 当初の案では、和風な部屋の反対側にロシア風のかまどと壁にペチカを 組み込む、という様式を考えられていたとか。 この民藝館がオープンしたのは戦後まもなくで、洋の文化がどっと入ってきた時代ですが、 今見るとまた新鮮で、ちょっと憧れるようなインテリアです。 右真ん中のモダンなトリコロールの敷物は倉敷緞通。 倉敷の伝統工芸であり、丹念に編みこまれた丈夫な作りです。 潔い色使いのデザインは芹沢けい介氏(人間国宝である染織家)によるもの。和洋問わず、古さを感じさせず、どんな空間にも溶け込みます。 左下のい草をきっちりと編みこんだ椅子はトンと呼ばれ、使い勝手が良く人気者。 畳表を作るときの端っこに出た余り部分を利用しています。 詰め物をしているわけではなく、全部い草でぐるぐると巻き詰めており、 座ってみるとお尻の当り具合がよいのです。 持ち運びも簡単で小回りの利きそうな椅子。 しかし今はもう作る人がいないんだとか(誰か作って下さい!)。
ゆるやかに素朴で風情のある倉敷ガラス
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実用的でありながら優雅な佇まいの倉敷ガラス。 |

微妙な色の加減、緩やかなフォルム、どこかほのぼのとした風情が魅力。
ガラス戸棚の中に展示された、決して大きなスペースではないのですが、 ちょこんちょこんと並んだ色とりどりのガラスたちが愛おしく、 いつまでもずっと眺めていたくなるコーナーです。
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