外観

鳥取民芸美術舘。駅からも程近い街中にこじんまりと佇んでいます。


鳥取といえば「砂丘」と「水木しげる」くらいしか知りませんでした。 学生時代に行った初めての鳥取は、砂丘で砂まみれになった思い出だけがぼんやりと記憶に残り、 なんだかとても遠い存在だったのです。 それが今回ひょんなきっかけから、 鳥取という鳥取をみっちりぎっしり盛りだくさんに味わってまいりました。 鳥取って、日本で一番人口が少ない県なんですって。 だからまだまだ知られざる、お宝がいっぱい潜んでいるらしい・・・?!  今回は、「ものづくり」を中心に、ディスカバー鳥取!を3連載でお届けします。 まずは、鳥取のものづくりに深く関わる、「民芸美術舘」へGO。


実用品にこそ、真の美しさが宿る

館内
展示品はもちろん、建物の造りや什器も素晴らしい。
鳥取駅からも歩いて3分くらい。土蔵造りの瀟洒な建物群がちょっと目を引きます。 ここ一帯は「民芸コーナー」と呼ばれているそうで、美術館、工芸店、割烹の3店が仲良く並んで建っています。 観て、買って、食べる、という旅の醍醐味を一気に楽しめる、観光客にとって 願ってもないスポットですが、これにはちゃんと意味があります。

「飾っておくだけではない、使ってこそ、使われてこそ、命が生きる」 という「用の美」を謳い、柳宗悦らが始めた民藝運動。 鳥取では、地元で生まれ育った吉田璋也というお医者さん がプロデューサーとして、民藝運動を指導していたそうです。 この民芸コーナーは、 よりよいものづくりによって生まれた工芸品が、生活の中で日々使われ、 一層暮らしが美しく豊かになるように、という思いが込められています。 「買う」、「食べる」は、 美しい工芸品を自分の生活にも取り入れることができて、 実際の使い方も学べる、という生活的美術館の位置づけなのです。

館内の様子
山陰をはじめ全国から集まった民芸品、及び、
中国、韓国、西洋等の古い民芸品が並ぶ。


民芸調の品というと、いわゆる土産物屋に並ぶ、 品がなくややうっとおしい、粗雑なイメージもありますが、 本来の民芸品とは一体どういうものなのか、ここへ来るとハタと気づきます。 民芸品はリーズナブルだけど、粗末な安物ではありません。 もちろん天才芸術家が作った高価なものとも違うけれど、 コツコツと丁寧に誠実に作られた、名もない職人の工芸品には、 人のぬくもりや清々しさを感じさせる、健康的な美が宿っています。 展示品は古いものなので、貴重で珍しいものが多いですが、 簡素で素朴な風情があるせいか、親しみやすく日常的で、 うちにもこれがひとつあったらいいなあ、と 思わせるような近寄りやすさがあります。



館内の様子
右上のベンチは吉田璋也氏の病院で実際使われていたもの。
障子の図案も電気のスイッチプレートも、吉田氏がデザイン。


1階と2階のこじんまりとした展示室なので、ゆっくりと落ち着いた気分で鑑賞できます。 展示品は、半年ごとに陳列替えされるそうですが、 作品に手を触れる機会として、地元の作り手が一緒に展示を手伝うんだそう。 自身の作品のインスピレーションの源、美の手本として、美術館を訪れる作り手も 多いんだそうです。

2階の様子
まるで誰かが住んでいるような、お家のような美術館です。


ゴージャスなご馳走ばかりを食べていたら疲れてしまうけれど、 炊きたてのほかほかご飯とお味噌汁は、飽きずに毎日を満足して過せるもの。 ここにある民芸とは、そんなご飯と味噌汁のような、素朴で温かく 日々眺めていたい、誠実な美しさのある作品なのです。


鳥取民芸美術舘
鳥取県鳥取市栄町651
tel 0857-26-2367
10:00~17:00 水曜休館


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