坂の街、渋谷
高低に合わせて異なる表情が
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渋谷駅の明治通り側では副都心線、東急東横線渋谷駅地下化の工事が進む |
言わずとしれた東京の大ターミナルのひとつ、渋谷。一日の乗降客数200万人超は、東京駅に並ぶ規模。山手線はもちろん、埼京線、湘南新宿ラインなどのJR各線、東京メトロ銀座線、半蔵門線、東急田園都市線、東急東横線に京王井の頭線が乗り入れし、さらに、副都心線も建設中と、足回りの便利さは言うまでもありません。また、デパートやファッションビルなどの賑わいも、これまた、同様です。
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駅脇の宮益橋からは天現寺橋までが渋谷川、それ以遠は古川となって港区を流れる |
さて、その渋谷を、住むという観点から見たとき、まず、意識しておきたいのは、土地の高低です。以前の記事
「お金持ちはなぜ高いところに住む?」で取り上げたように、高い土地は古くから開発されてきたため、どうしても、地価が高くなります。また、現代ではあまり考えられませんが、昔の低地は洪水の危険もあり、衛生上も湿気が高く、嫌われてきました。
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国道246号から別れ、渋谷へ下る宮益坂。両脇には古い建物も |
そうした目で渋谷という地名を見ると、お分かりですね、谷です。渋谷とは低い土地を意味する地名なのです。実際、国道246号を青山方面から渋谷に向かうと、宮益坂、金王坂と2つに別れた坂を下って渋谷に到着します。東京メトロ銀座線渋谷駅は地上3階にありますが、それは隣駅表参道との間に20mもの高低差があるからです。駅の脇には低い地であることを明確に示す、渋谷川が流れています。駅の高架をくぐると、246号から左手は上り坂で、高台を意味する地名の、桜丘町方面です。
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江戸時代に鍋島藩の屋敷だった、松涛鍋島公園。意外に公園の少ないこの地域ではファミリーの憩いの場だ |
さらに、渋谷の繁華街を抜けて東急本店の裏に回ると、そこからは急な上り坂になっており、上ったところは松涛、神山町など、都内屈指のお屋敷街です。つまり、渋谷の中心街は谷の底にあり、高低差によって街の表情が変わっていくというわけです。
中心部には築年数の経った狭めのマンション、
坂の上には大きな一戸建て、低層マンション
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渋谷区役所の裏手は下り坂になっており、途中には古いビルが |
住宅という面でも、高低によって、供給される物件は2極化しています。まず、中心部は古くて、全般に狭めです。例えば、渋谷駅周辺、5分圏内を歩いてみると、昭和30年代に建てられたとおぼしき、今は大半が事務所として使用されている建物が目につきます。専有面積で見ると、30m
2~50m
2程度。また、東急ハンズと渋谷区役所の間の路地には古いアパートなども一部残されています。
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駅からは上り坂を経た高台にはお屋敷街が続く |
これが神山町あたりに行くと、3階建ての天然石張りのマンションや大きな一戸建てになってきます。一部、アパートなどの集合住宅もありますが、ワンルームや1Kといった小規模な間取りではなく、単身者向きでも1LDK以上など、広めが中心です。
渋谷駅周辺の町の位置関係図
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渋谷駅周辺の町の位置の概念図。お屋敷街は駅から遠い、高台にあり、それ以外は低い土地が中心に |
つまり、この街に住むとした場合の選択は、駅に近い、便利だけれども住環境としては決して静かとは言えない駅周辺で、比較的手ごろに買う、借りるか、駅から坂を上る、静かな住宅街で高額を出すか、のいずれか。極端な選択を迫られる街というわけです。
では、次ページで、実際の相場や供給情報などを見ていきましょう。