日光街道の宿場街、旧貨物場が
緑あふれる水辺の街に大変身
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都内では品川、田端とここの3カ所に貨物駅がある |
江戸時代には日光街道の宿場町だった南千住。明治時代には官営のレンガ工場を始め、工場が立ち並ぶ工業地帯でもありました。今も駅の東口に広がる、JR貨物の広大な隅田川駅も明治30年に当初、石炭の集積所として設立されました。その後、明治34年から一般貨物を扱うようになり、今に続きます。
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リバーハープスクエアの角に建つ、リバーハープタワー。個性的な外観が目をひく |
貨物駅から隅田川にかけての広大な工場跡地、それに隣接した住宅密集地、旧国鉄用地などを合わせた48.8haの再開発が南千住を大きく変えました。最初に完成したのがリバーハープスクエアと呼ばれる3棟のタワーマンション。都営住宅、都住宅供給公社、UR都市機構がそれぞれ管理するもので、38階建てのリバーハープタワー南千住2号棟は地域のランドマークとも言える存在です。ちなみにリバーハープとは、再開発エリアが川に沿って楽器のハープのような形をしていることから名づけられたそうです。
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スーパーに専門店、焼きたてパンの店がどが入ったララテラス。再開発エリア内では、ここと、ベルポート汐入なる商店街が主な買い物スポット |
その後、専門店と大型スーパーが揃ったLalaテラス南千住や飲食店、スポーツクラブの入ったウェルシップなどの商業施設、都立汐入公園などが整備され、今ではかつての工場地帯の面影がないほどに開発されてきました。
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平坦で広々とした歩道、自転車道路が設けられているため、買い物などには自転車を利用する人が多い |
この再開発エリアの魅力はなんといっても、計画的に整備された美しい街並み。並木の植えられた道路は歩道と車道、さらに歩道内は歩行者、自転車と分けられ、広々とした雰囲気。学校や消防署、公園は計画的に配されています。特に防災拠点でもあり、荒川区内では最大の広さを誇る都立汐入公園は芝生の緑が目にまばゆいほど。テニスコートや荒川区の公園では唯一というバーベキューサイトもあり、休日には子どもの声が響きます。隅田川沿いには散歩やジョギングにうってつけのコースも整備されています。
南千住と周辺の位置関係概念図
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南千住は蛇行する隅田川沿いに広がる東口再開発エリア、水戸街道沿いの古い町が残る西口エリアからなる |
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休日になると、サッカーや野球、キャッチボールに興じる子どもたちの姿をあちこちで見かける |
こうした環境のせいか、住民は子どものいるファミリーが多く、街を歩くと子どもの姿を良く見かけます。また、その子どもに声をかける人を見かけることが多いのも、この地域の特徴。声をかけあったり、立ち話をする人も多いので、下町の人情味が今に残っているのかもしれません。
また、日比谷線に加え、平成17年8月にはつくばエクスプレス駅も開業、より便利になったこともあり、現在もマンション建設が続いています。
江戸の風情を残す佇まいも
暮らす楽しみのひとつ
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神社敷地内には樹齢数百年といわれる大きなイチョウの木などが残されている |
さて、近代的な東口とは全く異なる風景を見せているのが西口。駅前は2010年に再開発が行われ、1~3階には飲食店、区民事務所、クリニックモールなどが入ったタワーマンションが建ちましたが、少し離れると往時の雰囲気が残ります。特に水戸街道から三ノ輪にかけての辺りでは、通り沿いにはマンションやビルが並んでいますが、その間には、由緒正しい寺社仏閣が点在、歴史を感じさせてくれます。千住大橋近くの素盞雄(すさのお)神社は平安時代の創建で、3年に1度開かれる天王祭りは有名。芭蕉の句碑などもあります。
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都電荒川線と平行して並ぶジョイフル三ノ輪。500mほどに130軒ほどの商店が並ぶ |
個人商店が中心の商店街が多いのも特徴。駅近くには南千住商店街(通称コツ通り商店街)、仲通り商店街、南千住商友会、駅はお隣三ノ輪になりますが、三ノ輪銀座商店街(ジョイフル三ノ輪)などがあります。ただし、ジョイフル三ノ輪を除いては日曜日は休み、あるいは夕方には閉めてしまう店もあり、昔ながらの商店街という印象です。
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焼き鳥や揚げ物、鰻に煮物、てんぷらなど、その場で作って売っている店が多い |
商店街内にはいかにも手作りと思われるような惣菜を売る店が多く、また、競争があるためか、価格も安く、忙しい主婦にはうれしい限り。かつては隅田川でも捕れたのでしょうか、うなぎや川魚を売る店も多く見かけます。面白いことに、街道沿いだったからでしょうか、履物屋さんも目につきます。
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通りから入った目立たないところにあるのに、行列ができていた鰻の老舗 |
また、今風の飲食店はあまり見かけないものの、老舗の鰻屋さん、蕎麦屋さんなども点在しています。こちらも、気軽に利用できる価格が下町風です。
では、次ページでは気になる住宅事情を見ていきましょう。