研究結果が真逆な理由……「観察試験」と「介入試験」の違い
「Jカーブ効果」を図に表すと、このようになります。
■観察試験
すでにある生活習慣を解析したいときに良く用いられる方法で、今回話題となっている結果を導いた研究では、この方法が使われました。観察試験では、薬剤の投与などの働きかけは行わず、その集団を自然な状態のまま、文字通り「観察」します。
結果を解析する際の評価方法の一つに、「総死亡率」という指標があります。こちらも意味も文字通りで、観察の対象となっていた集団全体の死亡率を見ます。観察試験期間内の死亡率が低かった場合、実際にその人たちが40代の集団であれ、60代の集団であれ、実際にその人たちが何歳まで生きたかを見届ける必要はなく、「その集団は長寿だった」と結論づけられます。
総死亡率の解析結果では、「J-Curve効果」が良く認められます。例えば肥満度に関しては、痩せていても肥満でも死亡率が高くなります。コレステロールに関しても同様のJ-Curve効果があります。極端に低すぎても高すぎても、死亡率は高くなってしまうのです。J-Curveの底になる、総死亡率がもっとも低いコレステロール値は、「ほどほどよりもやや高め」という傾向があるようですが、Jカーブなので、「高コレステロールなほど長生き」というわけではありません。
■介入試験
一定の条件の集団を見守る「観察試験」と違い、薬剤を用いて疾患の発症を減らす臨床試験を行って結果を見る方法を、「介入試験」と呼びます。従来のコレステロールを下げるべきという方針は、この介入試験に基づく考えです。
介入試験は、実際に人体に薬剤投与という影響を加えるので、倫理的な問題を含む可能性があり、公的機関に届け出を行ってから実施する必要があります。評価方法も事前に公表します。これまで実施されたコレステロールを下げる薬の介入試験では、コレステロールを下げることで、血管が詰まることによる疾患が減少させられるという結果が出ています。この点で、コレステロールをほどよく下げるのは、健康管理に有効ということがわかります。
一方で、介入試験は発表された結果を第三者が解析することが可能という特徴も持っています。上記の結果を第三者が客観的に評価した場合、「コレステロール以外の危険因子ももっと考慮すべきだ」という視点での解析も可能です。冒頭で述べたように、危険因子はコレステロール以外にもさまざまなものがあるからです。この違った視点から導き出されたものの一つが、今回発表された研究結果なのです。
次のページでは、結局、高コレステロールの人は何をすればよいのかを解説します。